マイクロソフトは12月12日,Xbox 360ならびにWindows用のゲームを開発できる統合型ゲーム開発環境「XNA Game Studio Express」の無償提供を開始した。「C#」を使って開発したゲームをXbox 360上で実行するためには,年額9800円の「XNAクリエイターズクラブ」に加入する必要がある。

 開発環境であるXNA Game Studio Expressは,「Visual C# 2005 Express Edition」をベースにしたもので,マイクロソフトのWebサイトから無料でダウンロードできる。XNA Game Studio Expressでは,Xbox 360用のゲームと,Windows用のゲームが,同一のツールで開発できる。

 Windows用のゲームは,Windows XPに「XNA Frameworkランタイム」をインストールすれば実行できる。開発したWindows用ゲームは,無料で配布したり,有償で販売したりして構わない。

 Xbox 360用ゲームを実行するためには,年額9800円の「XNAクリエイターズクラブ」に入会する必要がある。XNAクリエイターズクラブは,Xbox 360用ネットワーク・サービス「Xbox Live」から加入できる。

 XNAクリエイターズクラブに入会すると,XNA Game Studio Expressを実行するWindows XPとXbox 360をネットワーク接続し,XNA Game Studio Expressでコンパイルした実行イメージをXbox 360に転送して,Xbox 360上で実行できるようになる。

 XNAクリエイターズクラブのような仕組みを設けているのは,マイクロソフトがXNA Game Studio ExpressでコンパイルしたXbox 360用ゲームを,光学メディアや外部メモリーなどを使ってXbox 360に転送することを認めていないため。

 一般的に,マイクロソフトやソニーといったゲーム・ハードウエア・ベンダーは,ゲーム・タイトルのメーカー(パブリッシャー)からライセンス料を徴収して,そのゲーム・ハードウエア向けのゲーム販売を許可している。マイクロソフトは,開発ツールを無償で提供するが,Xbox 360用ゲームを光学メディアなどに納めたパッケージの形で自由に配布したり販売したりすることは,ライセンス料に基づくビジネス・モデルを破壊する可能性があるので,許可していない。

 ただしマイクロソフトは,Xbox 360用ゲームのソース・コードを配布することは許可している。もし,XNA Game Studio Expressで作成したXbox 360用ゲームを,知人などにプレイしてもらいたい場合は,知人にもXNAクリエイターズクラブに入会してもらい,その上でXbox 360用ゲームのソース・コードを知人に渡す。知人は,受け取ったソース・コードをXNA Game Studio Expressでコンパイルし,Xbox 360に実行イメージを転送すると,Xbox 360上でゲームを実行できるようになる。

 もっとも,このような変則的な配布形態が変わる可能性もある。マイクロソフトの泉水敬執行役Xbox事業本部長は「2~3年のタイム・スパンで見た話になるが,将来的には,XNA Game Studio Expressで開発したゲームを,Xbox Liveの『マーケットプレイス』で販売できるようにする考えだ。当面は,ゲームのコンテストを開催して,コンテストの入賞作品をマイクロソフトが販売すると言ったビジネスになるだろう」と語る。同社では「Dream‐Build‐Play」というコンテストを,2007年1月1日から開催する。このコンテストの入賞作品が商用ゲームとして販売される可能性があることを,泉水Xbox事業本部長は示唆している。