写真1●NECのNGN像を語る,藤江一正副社長(左)と,日経ソリューションビジネス誌の宮嵜清志編集長(右)
写真1●NECのNGN像を語る,藤江一正副社長(左)と,日経ソリューションビジネス誌の宮嵜清志編集長(右)
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写真2●NEC製のパーソナル・ロボット「PaPeRo」(中央)
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 次世代のネットワーク技術やインフラの姿を総称するキーワードとして,NGN(次世代ネットワーク)が盛んに取り上げられている。NGNで将来はどのように変わるのか。そしてNECはNGNに向けて何をしようとしているのか――。「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2006」の壇上で,NECの藤江一正副社長に,日経ソリューションビジネス誌の宮嵜清志編集長が迫った(写真1)。

 まず宮嵜編集長が藤江副社長に提示した“お題”は,「消費者主導型経済の到来」である。インターネットの普及で個人の意見や感想の流通が活発化。それにより,個人の趣味趣向,意見,行動が市場を大きく左右するようになった。

 消費者主導型というトレンドは,技術にも波及している。インスタント・メッセンジャー(IM)やブログ,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)といった,消費者向けに作られ,磨かれた技術が企業に転用される,という流れが形成されつつある。

 この動きはNGNにどう影響するのか。この問いかけに対して藤江副社長は,「消費者主導型経済の到来は,NGNを考える上で見逃せない動き。だからこそ,NECはNGNを,インフラとその利用シーンのセットで考えている」と返す。「NECはNGNを象徴する,さまざまな実証実験を実施している」(藤江副社長)という。

 その一つが,ITS(高度道路交通システム)の実証実験。この実証実験では,自動車間のリアルタイム通信インフラを構築する。いわば,自動車のP2P(Peer to Peer)ネットワークだ。これにより,前方の事故処理の進ちょく状況や,駐車場の空き状況,高速道路で次の休憩場までどのくらいの時間がかかるか,といった「ローカルなリアル情報」(藤江副社長)の流通を狙う。

 「すでに普及しつつある自動車のカー・ナビゲーション・システムも有用だが,細かい情報まではカバーできない。ローカルなリアル情報の流通には,こうした自動車同士の通信ネットワークが有効だ」(藤江副社長)。NECでは欧州研究所が中心となって研究を進めており,独BMWや本田技研工業など大手自動車メーカーが名を連ねる「CAR2CARコミュニケーション・コンソーシアム」にも参加。自動車メーカーとともに,研究開発を続けているという。

 次に藤江副社長が紹介したのは教育分野。まず藤江副社長は壇上にNEC製のパーソナル・ロボット「PaPeRo(パペロ)」を“招き”入れた(写真2)。NECは教育機関の協力を得て,PaPeRoを使った「オンデマンド・エデュケーション」の実験を進めているという。

 PaPeRoはユーザーの声色や表情を認識して応答を変える機能を備えている。オンデマンド・エデュケーションは,この機能を利用して,生徒や児童の反応から学習状況を判断し,ネットワークから最適な教育コンテンツをダウンロードする,というものだ。「PaPeRoは昨年の『愛・地球博』で出展したところ,子供に大変人気だった。PaPeRo相手なら楽しく学習できる」(藤江副社長)。

 最後に紹介したのは,NECが協力した,総務省の緊急医療通信システムの実証実験である。救急車にカメラやセンサー,ネットワーク機器などを搭載。患者を乗せた救急車から,病院に患者の画像やデータをリアルタイム送信。病院から救命士に応急処理の指示を出しつつ,病院ではいち早く患者の状態に応じた治療体制を整える,というものだ。

 「IP化されたNGNなら,多様なアプリケーションが実現できる。だからこそ,NGNはインフラと利用シーンをセットで考えるべきだ。NGNというとインフラや技術の面ばかりに目が行きがち。だが,どのような社会を実現するかというビジョンがなければ,インフラや技術は存在し得ない。特に消費者主導の動きが活発している流れの中ではなおさらだ」。藤江副社長はこう断言した。