「確かに松下電器産業は強い。堅牢ノートパソコンの世界シェアで7割は占めているのではないか。しかし当社は、FA(factory automation)向けパソコン市場で20年の実績を持つ。工場向けで培った堅牢パソコンのノウハウをノートパソコンにも生かし、場所や環境に縛られずどんな状況でもパソコンを使えるようにしたい――」。NEC 放送・制御事業本部 制御システム事業部 第三システム部 マネージャーの中野智視氏はこう語気を強める。

 NECは耐衝撃性・防水性・防塵性などを高めた業務用ノートパソコンの新機種「ShieldPRO FC-N21S」を、2007年1月下旬に出荷する(関連記事)。同製品の設計には、かつて「FC-9800シリーズ」などで強さを誇ったNECの、業務用パソコンに懸ける思いが垣間見える。

図1
「ShieldPRO FC-N21S」

コードをつないだままでも防滴

 FC-N21Sでまず重視したのが、防塵・防滴性能の確保だ。FC-N11Fの防塵・防滴性能はJISで規定された「IP51」等級に準拠したものだったが、これをFC-N21Sでは「IP54」等級に引き上げた。

 IP規格は、もともと国際電気標準会議(IEC)で定められた防塵・防滴等級の規格で、その後日本工業規格(JIS)でも採用された。IPという文字に続く1けたは防塵等級、その次の1けたは防滴等級をそれぞれ示す。FC-N11Fの場合、防塵性は確保していたが防滴性が0~8のうち下から2番目の「1」だった。これは、鉛直に落下する水滴からのみきょう体を保護できるというもの。15度以上傾斜した方向からの水滴の浸入や、下から噴出してくる水に対する保護はできておらず、堅牢ノートとしては心許ない水準であった。

 FC-N21Sでは、きょう体への水の浸入を極力防ぎつつも、仮に浸入があった場合でもきょう体の外へ排水でき、故障を防ぐよう設計している。まず、キーボードの下部は防水シートで覆い、さらにきょう体底面の上側に排水孔を設けている。きょう体の側面に付いている端子部、メモリー増設などに用いるきょう体底面のスロット、きょう体とディスプレイ部をつなぐヒンジ部などは、ゴム製のパッキンを二重に施しており、外側のパッキンと内側のパッキンの間に微細な排水孔を開けている。きょう体底面にはスピーカーの穴が空いているが、ここは「空気は通すが水は通さない特殊シートを張ることで対処している」(中野氏)。

図2
きょう体底面を上から見たところ。上辺と左右に付いている黒いゴムが、端子部を保護するパッキンである。上中央に開いている4個の穴は、キーボード下部からの水を外部へ排出する排水孔

図3
キーボードを裏側から見たところ。微細な穴を多数開けているのが分かる

 興味深いのは、FC-N21Sが「コードを接続した状態でもIP54等級の防滴性能を実現」とうたっていることだ。