写真 「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2006」で講演するNTTドコモの辻村清行取締役常務執行役員プロダクト&サービス本部長
写真 「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2006」で講演するNTTドコモの辻村清行取締役常務執行役員プロダクト&サービス本部長
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 「モバイルSuicaを使い始めてから1回も駅の券売機やみどりの窓口に行ったことがない。全部携帯で済ますようになった。そのことをJRの方に話すと『券売機の数を減らせるし,みどりの窓口も縮小できる』と言われた」--。

 12月7日,東京ビッグサイトで開催中の「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2006」で,「ケータイの今とこれから」と題した講演を行ったNTTドコモの辻村清行取締役常務執行役員プロダクト&サービス本部長は,こんなふうに携帯がもたらす変化の具体例を示した(写真)。「モバイルSuicaの普及によって,券売機やみどりの窓口の跡地が別の目的で使えるようになる。駅の風景も変わる」。

産業全体で見れば「世界の携帯市場で日本はうまくいっている」

 講演で辻村取締役はまず,世界と日本の携帯電話の市場について解説した。2006年9月時点の携帯電話の契約数は世界全体では約25億。特に中国とインドの伸びが著しく,2010年には世界の人口の2人に1人が携帯電話を持つ時代になるとの予測を示した。また全世界で見ると携帯電話のユーザーは,2年から2年半で携帯電話を買い替えているとした。

 こうした中,日本の携帯電話市場は,(1)インターネットへの接続率が高い,(2)プリペイド契約の占める割合が極端に低い--といった特徴を挙げ,「ポストペイドで安定した収益を上げられ,インターネット接続も進んでいる。世界の他の国に比べて相当進んだ携帯先進国」と,日本が今後の携帯電話関連事業の世界展開に有利な立場にあることを示した。

 携帯電話端末の世界シェアを見ると「日本の携帯電話メーカーは必ずしも世界市場ではうまくいっていない」という現状認識を辻村取締役は示しながらも,「携帯電話の中には日本の部品が相当入っている」と明かした。カメラのレンズや折りたたみ式携帯電話に不可欠のフレキシブル・プリント基板,水晶発振子などで大きなシェアを占めているとし,「日本の産業トータルで見ると,携帯電話市場で日本はうまくいっている。アセンブルは今は必ずしもうまくいっていないないが,携帯市場は世界的にはまだまだ伸びる。がんばっていけるチャンスはある」と力説した。

携帯はいつでもどこでも手元にあるサイバーの窓口

 続けて辻村取締役は,携帯電話がもたらす将来の市場について語った。辻村取締役はまず携帯電話とパソコンの違いを説明。携帯電話は使う場所が限られるパソコンと異なり,「いつでもどこもで手元にあるサイバーの窓口」であると定義した。そして携帯電話は,(1)GPSや基地局によって利用者の場所を特定できる,(2)正しい時刻が分かる,(3)使っている人物の本人確認ができる,といった点がパソコンとは決定的に異なるとし,これらの特徴を使った新しいビジネスが展開できるとした。

 また,上述したモバイルSuicaの例やNTTドコモが注力しているクレジットカード事業などを取り上げ,NTTドコモでは,カードのリーダー/ライターを今年度中に15万台設置することを説明。加えて携帯電話は「プラスチックのカードと異なり,画面がついておりしかもネットワークにつながっている」点を挙げ,「リーダー/ライターからプッシュ型でクーポン券などを送信することが可能。フリーペーパー的な宣伝のビラなども配布できる」といった使い方の広がりを示した。

 こうした明るい将来像を示す一方,携帯電話には負の部分もあると辻村取締役は指摘した。その例が迷惑メール。NTTドコモでは1日当たり8億から10億通の電子メールを処理しているというが,実際に同社のユーザーに届くのはその中の10%程度。残りはランダムに生成されたあて先不明の迷惑メールだという。

 また辻村取締役は,携帯電話が環境に与える影響も無視できないとし,2年から2年半で世界的に端末の買い替えが発生している現状は,「それだけで10億台近くの廃棄が発生するということ」だと指摘。NECが開発した環境負荷の低い植物成分比率の高い“エコ端末”「N701iECO」などを例に,業界を挙げて取り組むべき課題であるとした。

 辻村取締役はこうした負の部分を考慮しながらも,「バランスの取れた発展が必要」と述べて講演を締めくくった。