写真1●写真左がNECの丸山好一執行役常務。写真右は聞き手の桔梗原富夫日経コンピュータ編集長
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 NECの丸山好一執行役常務は12月7日,「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2006」の講演で,同社が2007~2008年にかけて市場投入するサーバー技術などを披露した。サーバーのプロセッサやメモリー,ストレージの容量などを動的に追加する技術などだ。システム障害の原因を自動的に特定する技術を,米Amazonと共同で検証していることも明らかにした。

 丸山常務(写真1)は,「次世代ネットワーク(NGN)が普及することによって,ワークスタイルや企業の生産活動に様々な変化が起きる。そういった変化が起こると,バックヤードで動くサーバーにも,より一層の安全性や信頼性が求められる」と指摘する。この講演では,このようなシナリオに基づき,ワークスタイルを変化させるような新技術と,サーバーの安全性や信頼性を向上させる新技術が披露された。

携帯電話とワイヤレス・プロジェクタで社内のファイルを投影


写真2●携帯電話に対応したワイヤレス・プロジェクタのデモ

 まず丸山常務が紹介したのは,携帯電話に対応したワイヤレス・プロジェクタである。携帯電話を使って社内にあるプレゼンテーション・ファイルにアクセスし,その情報をワイヤレス・プロジェクタに投影するというデモを行った(写真2)。プレゼンテーション・ファイルはネットワーク経由で読み出しているだけであり,データは携帯電話にもプロジェクタにも残らないという。「社外でプレゼンテーションを行う場合にノート・パソコンを持ち歩く必要がなくなるし,うっかりデバイスを紛失しても,データが漏えいすることがないソリューション」(丸山常務)だという。

 丸山常務はもう一点,UHF帯を使用するRFIDの可能性についても指摘した。UHF帯RFIDでは,読み取り距離が数mに達するほか,高速に移動する物体に添付されたタグからも情報を読み出せるようになり,導入用途がこれまでよりも広がるという。「ジャストイン・タイムの体制をとる製造現場で,ますますRFIDが活用できるようになる。既に,UHF帯RFIDの導入を決めた顧客もいる」(丸山常務)という。

 企業の様々な現場で新しい情報技術が活用されるようになると,バックヤードの情報システムにも様々な要件が求められるようになる。丸山常務は「これからのITプラットフォームには,急激な需要変動があってもシステムを止めずに拡張できる『柔軟』,システム停止を排除した『安心』,システム運用の負担増を解消する『快適』が必要になる」と語り,これらを実現するための新技術を披露した。

サーバーやストレージのハードウエアを動的に拡張

 急激なトラフィック増大などに柔軟に対応できるよう,NECでは,サーバーのプロセッサやメモリー,ネットワーク機能などをシステムを止めずに拡張できる「スケーラブル・サーバー・テクノロジ」を2008年に出荷する。それに先立つ2007年には,ストレージの容量を無停止で最大640Tバイトまで拡張する「スケーラブル・ストレージ・テクノロジ」や,「VMware」や「Xen」「Itanium仮想マシン」といった異なる仮想マシン基盤を一元管理できる統合仮想マシン管理技術を出荷する。


写真3●表に2個,裏に2個のデュアルコア・プロセッサのほかメモリーなどを搭載したサーバー・セル。これを背後にあるNX7700iに稼働中に挿入することで,ハードウエアを動的に再構成できる
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 講演では,同社のハイエンド・サーバー「NX7700i」を使って,動的にプロセッサやメモリーを追加する技術をデモした。NX7700iはItaniumを搭載するサーバーで,次期Windows Server「Longhorn Server」(開発コード名)を使うと,4個のデュアルコア・プロセッサやメモリーを搭載する「サーバー・セル」単位で,プロセッサやメモリーを動的に追加できる(写真3)。NX7700iとLonghorn Serverの組み合わせでは,プロセッサやメモリーを追加するだけでなく,ハードウエア障害が発生した場合に故障部品を動的に交換する技術の実証実験にも,既に成功したという。丸山常務は「Longhorn ServerやLinuxといったオープンOSを,NECが進化させることによって,メインフレーム並みの信頼性をオープン・ハードウエアで実現する」と語る。

無停止型ブレード・サーバーを2008年に投入

 システムの信頼性を向上させる技術に関しては,ハードウエアの信頼性技術や,クラスタ・ソフトの新技術を紹介した。NECでは,メインフレーム並みの信頼性を実現した「NX7700i」や,全部品の冗長化を実現した「iStorage」を2007年に発売するほか,2008年には無停止型ブレード・サーバーを製品化するという(写真4)。


写真4●無停止型ハードウエアのラインナップ

 またクラスタ・サーバーの「CLUSTERPRO X」に関しても「現在のバージョンでは,障害が発生したノードを待機系ノードに切り替えるのに数分間かかっている。2007年に投入する新バージョンでは稼働系ノードのハードウエアやソフトウエアの障害予兆を検出することで,障害が起こる前に数ミリ~数秒でプロセスを稼働系ノードから待機系ノードに移動可能にする」(丸山常務)という。

全く新しい障害検出アルゴリズムをAmazonと検証中

 システム運用の負荷を軽減するために,NECでは全く新しい障害検出アルゴリズムを開発しているという。丸山常務は「性能低下をユーザーが体感したときに,すぐにその原因を特定できる技術だ」と語る。これは,システムに含まれる様々な要素同士の関係性を事前に分析して,正常時における各要素間で不変の関係を特定しておき,本来不変である要素間の関係が変化したときに,そこに障害の原因があると特定する技術だという(写真5)。


写真5●NECが開発中の新しい障害検出アルゴリズム

 丸山常務によれば,この障害検出の技術を搭載した運用管理ソフトウエアを2008年に製品化する予定で,現在はAmazonと技術を検証中だという。AmazonのWebサイトでレスポンスの低下などが発生した際に,その原因をすぐに特定して解決することを目指している。