写真1 講演する米国サン・マイクロシステムズのScott McNealy会長
写真1 講演する米国サン・マイクロシステムズのScott McNealy会長
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写真2 サンが提案する未来のデータセンター・プロジェクト「Blackbox」。1.0GHz UltraSPARC T1チップを2000コア搭載したT1000サーバーを,20平方フィートのコンテナに収容している
写真2 サンが提案する未来のデータセンター・プロジェクト「Blackbox」。1.0GHz UltraSPARC T1チップを2000コア搭載したT1000サーバーを,20平方フィートのコンテナに収容している
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写真3 未来のデータ・センターのイメージ。コンテナ型なので倉庫に積み上げるだけでいい
写真3 未来のデータ・センターのイメージ。コンテナ型なので倉庫に積み上げるだけでいい
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 12月6日,東京ビッグサイトで開催中の「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2006」の基調講演で米サン・マイクロシステムズのScott McNealy会長が登壇,「次世代ネットワーク(NGN)の世界では,オープン化と共有化を進めることでビジネスも社会も大きく発展する」と述べた(写真1)。

 McNealy氏は冒頭,世界に広がっている深刻なデジタルデバイドの問題を取り上げた。「今,全世界では毎週300万人のユーザーが新たにインターネットを利用し始めている。それでもなお,世界人口の4分の3の人々がインターネットに接続できずにいる」と,デジタルデバイドをいかに解消するかが最重要課題であると語った。

 さらに地球温暖化への対策も緊急課題であるとする。現在,米国の大手データセンターでは,1日あたり90バレルの石油に相当するエネルギーを消費している。近い将来,データセンターのコストの4割をエネルギーコストが占めるとの調査結果を紹介しながら,「サンでは低消費電力のマイクロプロセサ UltraSPARC T1の開発と,シンクライアント Sun Ray 2の導入を積極的に進めている」とMcNealy氏は説明する。例えば,通常のパソコンの消費電力が数百Wであるのに対し,Sun Rayの消費電力は4Wで,電力消費を数十分の1に低減できるという。

技術切り替えの“出口障壁”を抑えよ

 次いで,McNealy氏の話題は,いかに競争力ある企業ネットワーク・システムを構築するかに移った。「最も留意すべきことは,技術を切り替える際の“出口障壁(Barriers to Exit)”をいかに低く抑えるか」と指摘する。これまでは初期投資や当初数年間の運用コストをいかに抑えるかが課題だったが,優れた最新技術であっても1年半で陳腐化する時代にあっては,新しい技術にいかに低コストで乗り換えられるかが鍵になる。

 「出口障壁を低く抑えられるかどうかは,その技術がどれくらいオープンかに関わっている」というのがMcNealy氏の主張だ。オープンなインタフェース,オープンなコミュニティを持っている技術を導入することで,出口障壁が低く,競争力の高いシステムを構築できる。「サンはJavaをオープンソース化し“共有”することで,2万人の開発者と膨大なユーザーコミュニティを作り上げた。毎日,多くのイノベーションが“共有”によってもたらされ,多くの問題が“共有”によって解決されている」(McNealy氏)。

 次世代ネットワークの時代には,次世代のデータセンターが必要。McNealy氏はサンが考える未来のデータセンター・プロジェクト「Blackbox」をスクリーン上に披露した(写真2)。

 「Blackbox」は,サンの1.0GHz UltraSPARC T1チップを2000コア搭載したT1000サーバーを,20平方フィートのコンテナに収容するという移動型のデータセンターである。1.5ペタバイトのディスク・ストレージと2ペタバイトのテープ・ストレージを備え,1万ユーザーが同時に利用できる。必要な時,必要な場所でデーターセンターを設置できるほか,開設コストを従来の5分の1に削減できるという。「コンテナ型なので倉庫に積み上げるだけでいい。駐車場のスペースさえあれば,データセンターを開設できる時代が来る」(同氏)。

 「Blackboxのコンテナは,鉄道や飛行機に積んでどこへでも運べる。アフリカのキャンプなどに移動型データセンターを開設すれば,デジタルデバイドの問題を解決する一つの手段になるだろう」とMcNealy氏は構想を語る(写真3)。

 最後にMcNealy氏は,Web2.0時代の教育構想「Curriki」を紹介した。すべての子供に教育を受ける機会を与えることを目的に,小学校から大学など高等教育に至る様々な教育カリキュラムをWeb上で共有しようというプロジェクトである。

 識字率の低い米国でスタートした仕組みだが,世界各地でローカライズする活動を進めており日本政府にも働きかけている。教科書の評価方法をどうするかなど課題は多いが,堂々巡りが続く日本の教育改革論議にあって,イノベーションの視点から新しい可能性を提示しているところが興味深い。