写真1:μ-Chip Hibikiの「ucodeタグ」認定を発表する,東京大学大学院の坂村健 教授(左)と,日立製作所の井村亮 トレーサビリティ・RFID事業部長(右)
写真1:μ-Chip Hibikiの「ucodeタグ」認定を発表する,東京大学大学院の坂村健 教授(左)と,日立製作所の井村亮 トレーサビリティ・RFID事業部長(右)
[画像のクリックで拡大表示]
写真2:記者会見では,μ-Chip Hibikiとucodeの仕組みを使って荷物を識別するデモを見せた
写真2:記者会見では,μ-Chip Hibikiとucodeの仕組みを使って荷物を識別するデモを見せた
[画像のクリックで拡大表示]

 「5円タグ」という名で知られる日立製作所の無線ICタグ(RFID),「μ-Chip(ミューチップ) Hibiki」が,ユビキタス・コンピューティングに積極活用できるようになった。日立製作所は12月6日,μ-Chip Hibikiが「ucode」を扱えるICタグであるとの認定を受けたと発表した(写真1)。

 ucodeは,ユビキタス・コンピューティングを提唱する坂村健 東京大学大学院教授が考案した仕組み。ICタグやバーコードなどに,モノや場所を識別するための固有な番号を割り振るもの。非営利団体のユビキタスIDセンターが管理している(ucodeの解説を交えた記事はこちら)。今回μ-Chip Hibikiを認定した機関は,ユビキタスIDセンターである。

 μ-Chip Hibikiはパッシブ型のICタグで,経済産業省が日立製作所に委託した「響(ひびき)プロジェクト」の成果物である。インレット(ICチップにアンテナが付いたもの)を量産するための技術開発を目的として進めていたもの。「月1億個生産した場合,インレット1個を5円で販売できる」という目標値が設定されていたことから,「5円タグ」とも呼ばれている(響プロジェクトの関連記事)。

 今回μ-Chip Hibikiが「ucodeタグ」との認定に至った理由は,ucodeを扱う上でタグの仕様が十分であること,日立製作所側がμ-Chip Hibikiの製造段階でucodeを問題なく割り振れる体制にあることなど。「ユビキタスIDセンターでは数多くのICタグを試験しているが,日立製作所のICタグは信頼性が高い」と坂村教授は太鼓判を押す。「ucodeを埋め込んだμ-Chip Hibikiが広まることで,ucodeの普及と活用,そしてユビキタス・コンピューティングの発展がいっそう進む」(坂村教授)。

 日立製作所によると,2005年に開催された「愛・地球博」では入場カードに日立製作所製のICタグを使用。2200万枚以上発行し,読み取り装置で認識できなかったのは300枚強程度という。日立製作所の井村亮トレーサビリティ・RFID事業部長は「エラー率をかなり低く抑えられた」と品質をアピールする。

 井村事業部長は認定を受けたことによる展望を次のように語る。「ucodeはすでに自律移動支援プロジェクトをはじめ様々な国家プロジェクトで使われている。民間企業でも,トレーサビリティや物品管理など,実システムへの適用が始まった。ucodeの利用は海外でも始まっている。今回μ-Chip Hibikiがucodeタグとの認定を受けたことで,事業機会が一気に増えそうだ」。坂村教授によると,「ucodeを内包したICタグやバーコードは,すでに数十万個程度使われている」。

 日立製作所は今回の認定取得を受けて,ucodeを埋め込んだμ-Chip Hibikiの開発キットも提供開始する予定。開発キットにはICタグのリーダー/ライター,アンテナ,ICタグ500個,専用ソフトなどを同梱する。

■TRONSHOW関連記事
ユビキタス実験は東京・銀座へ,2007年1月から開始
新型モバイル端末,人に優しいキーボード…坂村教授が見どころを披露