公衆無線LANサービス“FON”の専用ルーター「LaFonera」
公衆無線LANサービス“FON”の専用ルーター「LaFonera」
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会見するFON社マーティン・バルサフスキーCEO
会見するFON社マーティン・バルサフスキーCEO
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 スペインFON WIRELESSの日本法人フォン・ジャパンは12月4日,公衆無線LANサービス“FON”を日本で本格展開すると発表,専用ルーターの販売を開始した。2007年末までの1年間に東京を中心に7万5000ユーザーの獲得を目指す。

 FONは,個人が設置する無線ルーターによって,大規模な無償のWi-Fiローミング環境を構築しようというもの。ユーザーはFONネットワークのコミュニティ・サイトにアクセスして会員(Foneros;フォネロ)の登録を行い,専用ルーター「LaFonera」(1980円)を購入して自宅に設置する。会員がそれぞれ地域ISPと契約して利用しているWi-Fi信号を,会員同士で共有することによって,世界中どこでも無線ブロードバンド・インターネットに接続できる環境を作ろうという構想である。

 「Fonerosは地域ISPと契約して有償のインターネット接続サービスを受ける権利を持っており,FONによってその権利を世界中に持ち歩くという感覚だ。フリーライダーと呼ばれるインターネットの無断利用者とは全く異なる」と,FON社のマーティン・バルサフスキーCEOは会見の席で強調した。FONの事業は現在,米国サンフランシスコ,仏パリなどの都市を中心に144カ国に普及しており,会員数は約16万8000人。最近7週間で会員数は2倍以上増えたという。

 FONのサービス内容は3つのタイプに分類される。(1)自分のアクセスポイント(AP)を共有する代わりに,他人のAPを無料で利用できる「Linus(ライナス)」,(2)自分のAPを共有することなく他人のAPを有料で利用する「Aliens(エイリアン)」,(3)自分のAPを共有し,Aliensからの収益の50%を受け取る代わりに,他人のAPを有料で利用する「Bills(ビル)」である。

 日本では当面,Linusに絞って会員増を図っていく。会員獲得の戦略としては,まず,ポータルサイトのエキサイトと提携して,ブロードバンド会員の「BB.excite」の中から東京都在住の3000人のモニターを募集し,専用ルーター「LaFonera」を無料提供する。モニターはBB.exciteで使用しているIDとパスワードで無料でFONの無線LANサービスが受けられる。同時にエキサイト内のECサイトでLaFoneraを販売する。LaFoneraはこのほか九十九電機の全国9店舗の店頭及びECサイトの「TSUKUMOネットショップ」でも販売する。

 また期間限定キャンペーンとして,12月5日~9日の5日間,フォン・ジャパンのホームページでLinus会員の無料登録(専用ルーターを無償で提供)を受け付ける。

 「ポータルサイトやコミュニティサイトとの提携を積極的に進め,2007年末までの1年間に7万5000人の会員登録,約1億円の売り上げを目指す」とフォン・ジャパンの藤本潤一CEOは目標を掲げる。

 LaFoneraの売り上げを約8000万円,Aliensからの利用料収入を約1000万円と見込んでいるわけだが,「LaFoneraのハード売り上げからは全く利益が出ない」と,藤本社長は話す。フォン・ジャパンとしてはまず,Linus会員を増やしてWi-Fiローミングのインフラを整備し,これを目当てにAliensが増加して大規模コミュニティが形成されることを狙う。最終的には,コミュニティに掲示する広告やアフィリエイト,Aliensからの利用料などを収入の柱として事業を展開していく計画だ。