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「現行の情報システムが5年後も自社の業務を支えられるのか、真剣に考える時が来ている」――。米ガートナー・リサーチのアプリケーション マネジング バイス プレジデントであるスコット・ネルソン氏は、企業の情報システムに転機が訪れようとしていることを強調する(写真)。ガートナージャパンが東京・台場で開催している「GartnerSymposium/ITxpo 2006」で語った。

 「古いシステムを支えられる人材は少なくなる。企業のIT基盤をどのようにするかが、2008年以降、企業のCIO(最高情報責任者)にとって最重要課題になるだろう」。ネルソン氏によると、この課題に対して企業には三つの選択肢があるという。一つ目は、「あえて何も実施しない」。「何もしないといっても、問題を無視することではない。情報を集め、慎重に判断した上でのことだ。待っているうちに問題を解決するのに有効な新しい技術が登場する可能性もあり、結果的にこれでよいケースもある」(ネルソン氏)。

 二つ目は、「ベンダーが勧めるプランに従う」。よけいな労力はかからないものの、ベンダー任せになるリスクがある。三つ目は、「自社で独自の取り組みを始める」である。「この選択をする企業が最も多い」(ネルソン氏)。

 自社でIT基盤の検討を開始するのに当たって重要になるのは、責任者の選任である。ネルソン氏は、「いつか誰かが始めるようにするのではなく、見当に当たっての責任の所在を明らかにするべき。IT技術にもビジネスにも精通し、立案能力も求められる、大切な役目だ」と説明する。

 実際の作業プロセスで重要なのは、業務プロセスや社内に蓄積したデータ、業務システムなどの状況を把握すること。さらに、IT基盤整備/移行に際してのルールや意思決定プロセスを明確化、アーキテクチャを変化する社内ニーズに合わせて適宜見直すこと、などがあるという。

 またネルソン氏は、ネットワーク経由でサービス化されたソフトウエアを提供する「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」にも言及。「現状はではSaaSと企業システムとの間にギャップがある。本格的に利用するためには、SOA(サービス指向アーキテクチャ)への対応など、企業システム側の準備が必要だろう」。

 ネルソン氏によると、「次世代のIT基盤はこれ、といった、どの企業にも共通する魔法のような解が現時点であるわけではない」という。同氏は最後に、「次世代のIT基盤は、企業が自社の実態を踏まえて検討を重ね、ようやく見いだすものだ。その意味で、長期的な取り組みになるだろう」とまとめた。