「ビジネスパーソンがやり取りする電子メールは50%減る」。ITリサーチ会社,ガートナー ジャパンは5年後の状況をこう予測する。

 その根拠は,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログ(blog),インスタント・メッセンジャー(IM)など,他のコミュニケーション手段を利用するユーザーが増えること。

 ガートナーのアナリスト,志賀 嘉津士氏によると「現状のビジネスパーソンの情報伝達手段を見ていると,その分量の8割が電子メール」。残りの2割が電話やファクシミリなどである。

 電子メールは便利な道具だが,一方で不便な面もある。例えば,複数人で情報や意見を交換するとき。「メールは複数人で返信が繰り返されると,情報や議論の内容がすれ違ったまま進むことがままある。また,過去にやり取りされた内容が確認しにくい」(志賀氏)。大量のメールが行き交う中,探したいメールを見失ってしまい,生産性を下げてしまうことさえある。

 その一方で,「SNSやブログは,多対多で情報や意見を交換する際には適したプラットフォーム」と志賀氏は言う。SNSは発信先となるグループを特定した上で日記を公開したり,特定のグループ用の掲示板を設置できる。ブログも同種の機能を備える。RSSリーダーを使えば,更新状況を一度に確認できる。

 簡単なメールのやり取りはIMに移る。若干こみ入った話は,「Skype」に代表されるP2P型の音声通話ソフトやビデオチャットなどに移るという。

 このように,一般の消費者向けに開発された技術が企業に浸透していく動きを,ガートナーは「コンシューマライゼーション」と呼んでいる。

 今,電子メールは社内外で大量に行き交っている。コンシューマライゼーションにより,電子メール「一人勝ち」の状況は,今後大きく変わりそうだ。

ITリーダーになるために


ITリサーチ会社ガートナーによる,ITリーダーに向けた記事を紹介します。

ITの潮流を知る

変わらなければ生き残れない(Peter Sondergaard 氏)

ITリーダーは,テクノロジーのもたらすメリットを予見しながらも,組織の中で変革を推進するのに四苦八苦している。だが,いよいよ旧態依然とした体質から目を背けるのをやめ,真正面から対峙すべき時が来た。

第2次インターネット革命の衝撃(David Smith 氏)

Web2.0が話題になっている。企業のITとWeb2.0は関係ない,あるいは消費者向け市場とは関係ない,と考える人は多い。しかし今後,消費者向け技術は,エンタープライズ・コンピューティングに大きな影響を与えていくだろう。ハード,ソフト,サービスのすべては,消費者市場を起源とし,それが企業にも影響を与えていく。

キャリアを創る

ITリーダー,成功へのエール(Dale Kutnick 氏)

ITリーダーが新しいビジネス環境の中で何をすべきか。成功するためには何が必要なのか。CEOの視点で経済と社会を概括した上で,ITの将来,日本のIT組織の現状,CEOの本音などを解説する。

ITリーダーがとるべき八つのアクション(Dale Kutnick 氏)

ITリーダーは何に取り組めば,CEO(最高経営責任者)や事業部門,顧客や市場のニーズを満足させられるだろうか。Dale氏が,ビジネス・インテリジェンスなど注目すべき八つの領域について解説。2007年から2009年の間に完了させたいアクションを明らかにする。

テクノロジーを知る

コミュニティがソフト開発を変える(Daryl Plummer 氏)

ソフト分野に起こるであろう二つの大きな変化,新しいデリバリー方法「Software as a Service(SaaS)」とオープンソース・ベースによる新しい開発モデルについて解説する。

「規律」と「小さく始めること」がSOA成功への近道(Yefim Natis 氏)

約10年前,ロイ・シュルタ氏とともにSOA(サービス指向アーキテクチャ)に関する調査論文を発表し,SOAという概念を広めることに貢献したイェフィム・ナティス氏。ナティス氏はSOA成功のカギを,「一に規律,二に規律,三に規律」,そして「小さく始めること」と言う。SOAの現状と課題を説く。