総務省は11月29日「P2Pネットワークの在り方に関する作業部会」(P2P-WG)の第1回会合を開催した。全8回の会合を開き,3月下旬までにP2P(peer to peer)の事実関係を整理し,4月以降は制度面を中心に検討を重ねる予定だ。座長は東京大学大学院情報理工学系研究科の浅見徹教授で,放送事業者,通信事業者,コンテンツ制作会社,識者などで構成される。この日はインフォシティとNTTコミュニケーションズ(NTTコム),電通総研の3社が,P2Pやコンテンツ流通の現状に関するプレゼンテーションを行った。

 まずインフォシティの岩浪剛太代表取締役は,「P2Pは本来有効な技術だが,ファイル交換により影の側面が認識されるようになった。ただこの部会では光の側面にも目を向けると聞いている。(P2Pの利用は)毒があるがおいしいフグの刺身を食べるようなもの。調理法が確立すればおいしく食べられる」として,P2Pの優位性を生かした正当かつ有効な活用法の確立に期待を寄せた。今後の検討に向けた観点としては,「P2Pユーザーはインフラの構成者かつ情報の発信者であり,不正利用を引き起こす側面もあるが,それを受け止めたうえで自由なユーザー利用と自己増殖という真価を発揮するかだ」と主張し,併せてP2Pの開発基盤を支える“自由なインターネット”の重要性を訴えた。

 次に,NTTコムの経営企画部 原隆一担当部長が説明に立ち,通信事業者とインターネット接続事業者(プロバイダ)が抱える課題として(1)トラフィック急増に伴う設備投資の加速的増大,(2)ユーザーが抱えるウイルスによる情報漏えいリスク,(3)非合法な情報流通による著作権侵害や個人情報保護への対応--の三つを指摘した。分析中でシミュレーションを一部含むと前置きしながらも,この夏に他社の協力を得て調査したWinnyの実態を紹介。それによると,Winnyのノード稼働数は1日に30~40万,Winnyネットワーク上の総データ・サイズは1日当たり290テラバイトに達するという。問題の解決策としては,認証や暗号化による制御で接続状況を管理する方法やCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク),特定のトラフィックをインターネット基幹網から分離するなどのアイデアがあるとした。

 最後にプレゼンを行ったのは,電通総研の北原利行氏。同氏は,コンテンツの権利者にとってP2Pは無許諾の流通で損害が出たり,無断改変や改ざん,利用料を徴収したくても利用を把握しずらいなどの問題点を指摘するとともに,P2Pを使った流通を許諾していない権利者団体が多いとした。消費者はP2PというよりもWinnyのように具体的なアプリケーションとして認知し,問題点としては著作権侵害よりセキュリティを心配するという。そしてネットワークを利用したコンテンツ市場への期待は高いが,透明性を含めた安全なネットワークが必要とした。