日本オラクルは11月29日、スイート製品「Oracle Event-Driven Architecture Suite(EDA Suite)」を発表した。「注文情報を入力する」や「倉庫に商品を入庫する」といった業務上のイベント・データを検知し、それを業務プロセスに沿った一連の処理の基点とする「EDA(イベント駆動型アーキテクチャ)」に基づくシステムの構築を支援するのが狙い。2007年1月9日に出荷開始する。

 EDAは、米ガートナーがSOA(サービス指向アーキテクチャ)を補完する概念として提唱しているもの。日本オラクルの三澤智光 常務執行役員は、「EDAはSOAと切っても切り離せない関係にある」と主張する。EDAの考え方を使うことで、SOAに基づくシステムの“前処理”の部分を効率よく実現できる、というのがその理由だ。

 EDAに基づくシステムは、例えばICタグなどを使って大量のイベント・データをリアルタイムで検知・取得し、それをシステムに通知するまでの部分を担当する。「この部分の開発には手間がかかる。様々なデバイスからイベント情報を取得しようとすると、そのための支援機能をデバイスごとに作り込む必要がある。イベント情報で業務プロセスを実行させる部分を実現するのも難しい」(三澤氏)。EDAでは、「イベント・ドリブン」や「メッセージ」に基づくアーキテクチャを採用して、この部分の実現を容易にすることを狙っている。

 EDA Suiteは、(1)イベント処理や業務プロセスの実行状況を監視する「Oracle Business Activity Monitoring」、(2)サービスの連携を制御する「Oracle Enterprise Service Bus」、(3)センサーからイベント情報の取得を管理する「Oracle Sensor Edge Server」、(4)イベント情報をメッセージとして配信する「Oracle Enterprise Messaging」、(5)ビジネス・ルールを定義・実行する「Oracle Business Rules」の5製品で構成する。

 このうち、(1)、(2)、(5)は、同社が11月13日に発表した「Oracle SOA Suite 10g Release3(SOA Suite)」(関連記事)に含まれている。(5)のビジネス・ルールは、取得したイベント情報を分析し、次の業務プロセスの処理へ連携させるために使う。SOA Suiteに含まれていた、ビジネス・プロセスを設計・実行する「Oracle BPEL Process Manager」や、ユーザー認証を一元管理する「Oracle Web Services Manager」、個々のサービスのインタフェースやデータ書式を一元管理する「Oracle Service Registry」は、EDA Suiteには含まれていない。

 すでに海外では、食肉メーカーの米シモンズ・フード(Simmons Food)がEDA Suiteを導入済みという。冷蔵庫内の圧力情報を収集し、その圧力に応じて自動的に指示を出すシステムを構築した。スーパーや家電量販店を手がける独メトロは、ICタグを使った店舗や倉庫での業務システム構築に利用できるかを検証しているという。

 価格(税抜き)は1プロセサ当たり750万円。Oracle Application Server 10gが別途必要となる。今年度(2007年5月期)中に3社程度のパートナー企業を確保し、製造や流通を中心に「少なくとも10件の事例を公表できるようにしたい」と三澤氏は話す。