「Web2.0が取り上げられている中,早速,一部で“Web3.0”というキーワードが話題になっている」。米ITリサーチ会社,ガートナーのチャールズ・エーブラムズ氏は言う。

 エーブラムズ氏は,ガートナー ジャパンが11月29日から開催しているイベント「Symposium/ITxpo」で講演。「Web2.0による企業変革」と題して,Web2.0が企業情報システムに与えるインパクトを解説した。

「もはやWeb系のテクノロジーは,企業が自社ITに採用すべき原則」
「特にマッシュアップは業務システムで有効な手法」
「Ajaxは今後10年を形作る重要なWebテクノロジー」

 このようにWeb2.0と企業情報システムの関係を説きつつ,エーブラムズ氏は「2009年,Webはどうなるだろうか」と話題を振った。そんな折に彼の口から出たのが,冒頭のコメントだ。

 現状,Web2.0について,漠然とはしているがようやく共通認識が出来上がってきたところ。そこに持ち上がった“Web3.0”についてエーブラムズ氏は,「私は単にWebと呼んだ方がいいと思う」と前置きしつつポイントを解説する。

 エーブラムズ氏によると,“Web3.0”の最大のポイントは,セマンティックWebである。

 セマンティックWebとは,Web上にあるコンテンツやデータを効率よく検索・収集するための,次世代Web技術の総称である。中核をなすのは,コンテンツやデータの「意味」。コンテンツやデータの意味情報を,「メタデータ」としてあらかじめ付加しておく。例えば「このデータ中にある『Windows』という単語は『OSの名称』を意味する」という内容を,メタデータとして一定のフォーマットで記す。インターネット分野の標準化団体であるW3Cは,「RDF(Resource Description Framework)」と呼ぶメタデータの仕様を策定している(W3CのRDFのWebページ)。

 メタデータを付加することで,コンピュータがコンテンツやデータをより高度な形で処理できる。ユーザーの代理の役割を果たすエージェント・ソフトに「この情報が欲しい」と命令を与え,ネット上の情報を自動的に収集させる,といったことが可能になる。

 セマンティックWebは,インターネットの発明者の一人,ティム・バーナーズ・リー氏が1998年に生み出したものである。これを“Web3.0”と呼ぶかどうかはともかくとして,セマンティックWebの実用化と普及が進むことで,インターネットに再度大きな波がやってきそうだ。

ITリーダーになるために


ITリサーチ会社ガートナーによる,ITリーダーに向けた記事を紹介します。

ITの潮流を知る

変わらなければ生き残れない(Peter Sondergaard 氏)

ITリーダーは,テクノロジーのもたらすメリットを予見しながらも,組織の中で変革を推進するのに四苦八苦している。だが,いよいよ旧態依然とした体質から目を背けるのをやめ,真正面から対峙すべき時が来た。

第2次インターネット革命の衝撃(David Smith 氏)

Web2.0が話題になっている。企業のITとWeb2.0は関係ない,あるいは消費者向け市場とは関係ない,と考える人は多い。しかし今後,消費者向け技術は,エンタープライズ・コンピューティングに大きな影響を与えていくだろう。ハード,ソフト,サービスのすべては,消費者市場を起源とし,それが企業にも影響を与えていく。

キャリアを創る

ITリーダー,成功へのエール(Dale Kutnick 氏)

ITリーダーが新しいビジネス環境の中で何をすべきか。成功するためには何が必要なのか。CEOの視点で経済と社会を概括した上で,ITの将来,日本のIT組織の現状,CEOの本音などを解説する。

ITリーダーがとるべき八つのアクション(Dale Kutnick 氏)

ITリーダーは何に取り組めば,CEO(最高経営責任者)や事業部門,顧客や市場のニーズを満足させられるだろうか。Dale氏が,ビジネス・インテリジェンスなど注目すべき八つの領域について解説。2007年から2009年の間に完了させたいアクションを明らかにする。

テクノロジーを知る

コミュニティがソフト開発を変える(Daryl Plummer 氏)

ソフト分野に起こるであろう二つの大きな変化,新しいデリバリー方法「Software as a Service(SaaS)」とオープンソース・ベースによる新しい開発モデルについて解説する。

「規律」と「小さく始めること」がSOA成功への近道(Yefim Natis 氏)

約10年前,ロイ・シュルタ氏とともにSOA(サービス指向アーキテクチャ)に関する調査論文を発表し,SOAという概念を広めることに貢献したイェフィム・ナティス氏。ナティス氏はSOA成功のカギを,「一に規律,二に規律,三に規律」,そして「小さく始めること」と言う。SOAの現状と課題を説く。