「タッグを組み,2人でCIOを務めたっていい」。「女性や外国人,25歳未満の若手をIT部門に入れよ」。

 ITリサーチ会社,ガートナー ジャパンのアナリストである山野井 聡氏は,こんなメッセージを日本企業のIT部門に投げかける。同社が11月29日から開催している「Symposium/ITxpo 2006」の基調講演で,IT部門の組織改革を訴えた。

 「専任のCIOを設置している日本企業は22.5%」。ガートナーが従業員2000人以上の企業を調査した結果である。「今や経営にITは不可欠」などと言われているにも関わらず,やはり少ないと見て良い。「実際,欧米に比べるとCIOの数は少ない」と山野井氏は言う。

 経営とITをつなぐCIOには経営のセンスや業務知識,人脈,ITの勘所など,多様な能力が要求される。そんな人物はなかなかいない。CIOの数の少なさは,日本企業の意識の低さのみならず,人材不足も理由の一つだろう。

 山野井氏は「だったら,タッグで対応するのも一つの考えだ」と提案する。ITの現場が分かるITリーダーと,業務が分かる業務リーダーでCIOの「機能」を果たす,といった格好だ。機動性や最終的な意思決定時にどうするのか,といった課題があるが,一つのアイデアとして十分検討の余地はある。

 ほかにも山野井氏はIT部門の組織作りにアイデアを示した。面白いのは,「カルチャー・ミックス」。これまでも一部の企業では,システムの利用部門から人材を受け入れたり,利用部門にIT部門の人材を派遣するという施策はなされている。だが山野井氏が提示するのは,より積極的なものだ。「もっと女性,外国人,あるいはデジタル機器を上手く扱える25歳未満の若手を入れてもいい」(山野井氏)。

 今後,携帯電話やWebなど一般消費者向けのITがより発達して,企業でも十分利用に値するものになっていく(ガートナーはこの動きを「コンシューマライゼーション」と呼んでいる)。また,企業経営の多様化に伴い,必要なITのあり方も当然変わってくる。そうした背景を踏まえての提案だ。

 山野井氏はIT部門の問題点として,利用部門との隔絶を挙げる。「IT部門は利用部門や経営層とのコミュニケーションが圧倒的に不足している」(山野井氏)。その不足が,ビジネスとITのかい離につながっているという。「ITリーダーは,業務時間の3分の1を社内外の“顧客”との対話に使ってほしい」と山野井氏は目安を提示した。

ITリーダーになるために

ITリサーチ会社ガートナーによる,ITリーダーに向けた記事を紹介します。

ITの潮流を知る

変わらなければ生き残れない(Peter Sondergaard 氏)

ITリーダーは,テクノロジーのもたらすメリットを予見しながらも,組織の中で変革を推進するのに四苦八苦している。だが,いよいよ旧態依然とした体質から目を背けるのをやめ,真正面から対峙すべき時が来た。

第2次インターネット革命の衝撃(David Smith 氏)

Web2.0が話題になっている。企業のITとWeb2.0は関係ない,あるいは消費者向け市場とは関係ない,と考える人は多い。しかし今後,消費者向け技術は,エンタープライズ・コンピューティングに大きな影響を与えていくだろう。ハード,ソフト,サービスのすべては,消費者市場を起源とし,それが企業にも影響を与えていく。

キャリアを創る

ITリーダー,成功へのエール(Dale Kutnick 氏)

ITリーダーが新しいビジネス環境の中で何をすべきか。成功するためには何が必要なのか。CEOの視点で経済と社会を概括した上で,ITの将来,日本のIT組織の現状,CEOの本音などを解説する。

ITリーダーがとるべき八つのアクション(Dale Kutnick 氏)

ITリーダーは何に取り組めば,CEO(最高経営責任者)や事業部門,顧客や市場のニーズを満足させられるだろうか。Dale氏が,ビジネス・インテリジェンスなど注目すべき八つの領域について解説。2007年から2009年の間に完了させたいアクションを明らかにする。

テクノロジーを知る

コミュニティがソフト開発を変える(Daryl Plummer 氏)

ソフト分野に起こるであろう二つの大きな変化,新しいデリバリー方法「Software as a Service(SaaS)」とオープンソース・ベースによる新しい開発モデルについて解説する。

「規律」と「小さく始めること」がSOA成功への近道(Yefim Natis 氏)

約10年前,ロイ・シュルタ氏とともにSOA(サービス指向アーキテクチャ)に関する調査論文を発表し,SOAという概念を広めることに貢献したイェフィム・ナティス氏。ナティス氏はSOA成功のカギを,「一に規律,二に規律,三に規律」,そして「小さく始めること」と言う。SOAの現状と課題を説く。