情報技術などの産学公連携の研究機関である京都高度技術研究所は11月27日,ソフトウエア・ファクトリーを研究対象とする「ソフトウェアファクトリ研究会」を発足させた。ソフトウエア・ファクトリーとは,製造業の工場をモデルにしたソフト開発環境のこと。工場の製造ラインに相当する設備の利用や改善活動などを通して,開発効率アップを目指す。

 ソフトウェアファクトリ研究会の代表者を務める,京都高度技術研究所の松本吉弘顧問は,「日本のDNAとも言える製造業の考え方を取り入れたソフトウエア・ファクトリーのあり方について,ソフトウエア開発に携わる担当者と研究していきたい」と,発足の理由を話す。松本氏は1970~80年代,東芝などでソフトウエア・ファクトリーを企画し,立ち上げた経験を持つ,ソフトウエア・ファクトリー研究の第一人者である。

 国内におけるソフトウエア・ファクトリーは1970年代から1980年代,日本のコンピュータ・メーカーが独自に立ち上げ,海外企業から大きな注目を集めた。技術がオープンになった最近,国内でもソフトウエア・ファクトリーを立ち上げる取り組みが進みつつある。「研究会の活動を通して,日本独自のソフトウエア・ファクトリーの取り組みを世界に発信できればと考えている」と,松本氏は語る。

 11月27日,東京都港区の日経BP社で開かれた第1回の研究会には,富士通,NEC,日立製作所,東芝,日本IBMなどソフトウエア開発を手掛けるインテグレータの品質管理・技術統括担当者や,NECビッグローブや住友電気工業など企業情報システム部門の技術責任者など,約40人が集まった。参加者の専門分野は業務系,組み込み系,制御系と幅広い。

 第1回の研究会では,参加者の関心事を洗い出すためのワークショップが開かれた。会場では参加者から「開発現場は安い人件費に頼っている。高生産高品質の開発体制を作ることで,現状を変えていけないか」「製造ラインの組み方やソフトの自動生成について研究できないか」といった意見が参加者の間で活発に交わされた。今後は,短納期で高品質なソフトウエアを開発する手法や,組織体制,コラボレーションの方法などの中から研究するテーマをまとめていく。

 ワークショップと合わせて,NECビッグローブの事例が発表された。同社では,製造ラインに相当する独自のフレームワークや,製造業の設計図に相当する図面を整備して業務アプリケーションを開発している。NECビッグローブ サービス開発本部の檜垣 清志グループマネージャーは発表の中で,「作るソフトウエアの特徴に着目してエンジニアリングを考えていくべき。ソフトウエア全般にエンジニアリングを適用しようとすると発散してしまう」といった,従来開発の問題点を指摘した。

 研究会には,情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(IPA SEC)と日経SYSTEMSが協賛している。今後は1~2カ月の間隔で,定期的に研究会を開いていく予定である。