「実施基準の公開草案(以下、実施基準案)の内容は、パブリック・コメントを反映させた正式版になっても、大きくは変わらないだろう」。ベリングポイントが11月24日に開催した「日本版SOX法 実施基準(公開草案)に関するプレスセミナー」で、同社の山本浩二ディレクターは、こうした見解を示した。

 実施基準案(正式名称は、「財務報告にかかる内部統制の評価および監査に関する実施基準(公開草案)」)は、金融商品取引法が求める、内部統制の整備・評価・監査に関する実務上の指針(ガイドライン)。金融庁が11月21日に公表した。今年12月20日まで公開草案に対するパブリック・コメントを受け付け、それを反映させた上で正式な実施基準を公開する予定である(関連記事1関連記事2)。

 山本ディレクターは実施基準案に関して、(1)経営者が「内部統制の有効性」を評価する手段を具体的に示している、(2)経営者の内部統制に対する取り組みが画一的にならないよう、「会社の状況に応じて適切に判断すべき項目」を明らかにしている、(3)経営者が内部統制の不備を「事前に」発見・改善できる工夫を施している、の3点を特徴として挙げた。

 その一方で、同氏は「問題点は残っている」と言い、(a)監査基準および監査基準委員会報告と、用語が必ずしも一致していない、(b)「財務報告にかかる内部統制の報告」に関する記述がない、(c)(全社的な観点で評価される)決算・財務報告にかかる業務プロセスの「評価方法」や「有効性の判断」に関して明記されていない、などを指摘。加えて、「財務報告」の範囲が「財務諸表」よりも広い、連結ベースの範囲として「関連会社」まで含めた検討が必要、といった点にも注意が必要とした。

 こうした問題点が残っているとはいえ、「今後、実施基準案が“軽く”なるとは考えにくい」と、山本ディレクターはみる。「それは、日本の内部統制制度が骨抜きになることにつながりかねない。米国の内部統制監査の水準より劣るような事態を招くのは、何より金融庁がいやがるだろう。内部統制監査に限らず、国際会計基準や財務諸表監査はいずれも国際的に収れんされる方向にある。内部統制制度を骨抜きにするのは、その流れにも反している」(同)。

 その上で、山本ディレクターは「経営者が実施基準に従って、会社の状況に応じた内部統制を整備・運用し、監査人との協議などを通じて監査人の信頼を得ることができれば、評価・監査にかかるコストは米国ほど増えない」と語った。