エステー化学営業本部営業推進グループの岡田章一マネージャー(前列右)、エステービジネスサポートのフィールドスタッフ事業部の寒林恒人部長(前列左)、エステー化学営業本部営業推進グループ業務管理チームの玉木弦士氏(後列右)、同じく高橋郁江氏
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 防虫剤「ムシューダ」などで知られるエステー化学は11月から、全国に2万数千店ある小売店での商品の販売状況を把握できる情報システム「システム1010(てんとう)」を強化した。各店の商品陳列状況などがグラフや写真を使ってビジュアルにパッと見て分かるようにしたのに加え、地図情報と連携させることによって任意のエリア内での複数店舗間の販売状況を比較しやすくした。

 このシステムを4月に分社したエステービジネスサポートが活用。従来よりも多くの小売店で、エステー化学が望む陳列方法をきちんと実現できるようにする。

 エステービジネスサポートのフィールドスタッフ事業部の寒林恒人部長によると、エステー化学の営業担当者と小売会社の本部スタッフとの商談で決めた通りの陳列方法を、店がきちんと実現できていないケースが増えているという。店舗の商品レイアウトは週次で変える店が多い。各社から次々と新製品が登場するうえ、24時間など営業時間を伸ばす店が増え、さらに正社員を減らしてパート社員を増やす傾向があるため、小売店側に商談通りの陳列方法を実施する余裕がなくなってきたからだ。

 このため、エステー化学側が小売会社の店舗を巡回して、商談通りの陳列ができているかをチェックし、できていないなら手伝う必要性が高まっている。エステービジネスサポートは、この商品陳列支援業務をするために設立された会社なのだ。

 エステービジネスサポートには現在40人強の商品陳列支援業務スタッフがいる。限られた人数で全国各地にある多数の小売店を効率よくカバーするには、冒頭のシステムが欠かせない。

 エステー化学の岡田章一営業本部営業推進グループマネージャーは、エステービジネスサポート設立の背景をこう補足する。「エステー化学には嗜好性が強く生活必需品ではない商品が多く、目的買いをしてもらいにくい。洗剤やシャンプーなどと違って、(防虫剤や防臭剤、芳香剤などの)当社商品は店で見て買う人が7~9割も占める。だから、来店者の関心を引きつけるプロモーションが欠かせない」

携帯電話から陳列写真をアップデート

 システム1010と接続したパソコン画面上で任意のエリアを選ぶと、複数の小売店をプロットした地図を表示。各店でそれぞれ、どんなカテゴリーの商品がどんな比率で売れているか、商談通りの陳列ができているか、営業担当者や陳列支援スタッフが何回訪問したか、といった情報を各種アイコンや円グラフで一覧できる。さらに、各店でのメーカー別・商品別の陳列スペース比率、実際の陳列状況を撮影した写真を見ることもできる。

 これらの多様な情報のうち販売データに関しては、プラネットから日次で受け取る納品データを転用する。プラネットは1985年に、資生堂やライオン、エステー化学など日用品・化粧品メーカー8社が出資して設立。2004年にジャスダックへ上場した。同社は多数の卸会社と提携し、日次で納品データを集めている。

 これに対して、店舗での陳列状況を撮影した写真データや、各店でのメーカー別・商品別の陳列スペース比率のデータは、実際に店に足を運んだエステービジネスサポートのスタッフが携帯電話を使ってイントラネットにアクセスしてから送信する。陳列スペース比率の数値は、エステービジネスサポートスタッフが店舗で商品別にメーカーごとの陳列量を目測したものである。この数値があれば、陳列方法と売り上げの相関関係を把握しやすくなる。

 今回のシステム強化プロジェクトにも参加していたエステービジネスサポートの寒林部長は、「様々な情報分析が容易になった。例えば、特定エリアを町単位で分割し、世代別人口構成比で色分けできる。すると、60歳以上の高年齢者が多い地域ではこの製品が売れている、といった分析がしやすい。販促の企画営業に生かせる」と、リニューアルしたシステムのさらなる可能性を示唆する。