マイクロソフトは11月21日,次期クライアントOS「Windows Vista 日本語版」のダウンロード提供を開始した。開発者支援サービス「MSDN(Microsoft Developer Network)」や管理者支援サービス「TechNet」を通じて入手できる。本来なら米国時間の11月17日に,「同 英語版」と同時公開される予定だった。公開が遅れた理由は,「ダウンロード・サイトへのアクセス殺到を緩和するための措置。トラブルがあったわけではない」(Windows本部 ビジネスWindows製品部 マネージャ 中川哲氏)という。

 ただし,Windows Vista 日本語版で用意される全エディションが提供開始されたわけではない。一部のエディションについては,未公開のままとなっている。

 Windows Vista 日本語版のエディションは六つある。コンシューマ向けにはローエンドから,(1)入門用でプリインストールのみで出荷する「Starter Edition」,(2)1台のPCを共用する場面を想定した「Home Basic Edition」,(3)複数台を使い分ける場面を想定した「Home Premium Edition」。企業向けには同じく,(4)Active Directoryクライアントの機能を持つ「Business Edition」,(5)(4)の機能強化版である「Enterprise Edition」がある。そして,(1)~(5)の全機能を包含するスーパーセットとして,(6)「Ultimate Edition」を提供することになっている。

 今回,ダウンロード提供されたのは,このうち,(2)Home Basic Edition,(3)Home Premium Edition,(4)Business Edition,(6)Ultimate Editionのみである。Windows Vistaは基本的に,Editionが違ってもDVDイメージは共通で,ライセンス・キーの違いでEditionが切り替わる仕様になっている。しかし,「Enterprise Editionに代表される一部のエディションは配布パッケージが異なるので,準備が間に合わなかった。今後,MSDNやTechNetを通じて,Enterprise Editionもダウンロードできるようにしたい」(中川氏)。

 なかでもEnterprise Editionは,マイクロソフトが企業向けに最も売り込みたいエディションの一つ。なぜならEnterprise Editionは,企業向けの一括契約(ボリュームライセンス)の契約者で,バージョンアップ保証サービス「ソフトウェアアシュアランス」の加入者にのみ提供する,いわば“スペシャル版”だからだ。企業にとっては,「Ultimate Edition」ほどのコストをかけずに,ハードディスク暗号化によるセキュリティの向上や,仮想OS機能によるアプリケーションの互換性確保などが見込める。

 マイクロソフトは11月21日開催した記者発表会で,企業向けに「Windows Vista Enterpriseアップグレードキャンペーン」を開始すると発表した。このキャンペーンは,Windows XP ProfessionalからWindows Vista Enterpriseへの移行を支援するもの。250台未満のPCを保有する企業向けのボリュームライセンスである「Open License」または「Open Value」の加入者で,2006年10月1日から2007年3月31日までにWindows XP Professional搭載マシンを購入した企業には,2007年1月1日から同3月31日の期間限定でソフトウェアアシュアランスの料金を33%程度割り引くという。

【お詫びと訂正】
当初,企業向けのエディション表記が「Professional Edition」となっておりましたが,正しくは「Business Edition」でした。お詫びして訂正します。