慶應義塾大学とKDDI,エフエム東京は11月20日,デジタル放送の放送波を使ってWebページなどのインターネット・コンテンツを同報配信する技術を開発。サービスの可能性などを共同で検討していくと発表した。
今回慶應義塾大学などが開発した技術は「IP over デジタル放送」と呼ぶ。放送波の中にIPパケットをカプセル化して埋め込み,放送波と共にユーザー宅に直接配信する。専用チューナーを搭載したパソコンで,放送コンテンツとIPパケットを分離する。デジタル放送とWebページなどをパソコン上で同時に表示できる。放送番組と連動しながら,インターネット・コンテンツを同時に多数の人に配信できるメリットがある。
発表会上ではそのメリットを生かした「ネットサーフィン同期型ディスクジョッキー」をデモした(写真1)。番組パーソナリティが,番組放送中に放送波を通じて,話題に沿ったWebページをユーザーに一斉配信する様子などを披露した。なお今回の発表はあくまで技術やサービス可能性の検討であり,実サービスの開始時期は未定。このシステムは,災害などで通信インフラが機能しない場合の情報伝達手段としても活用できるという。
会見に出席した慶應義塾大学の村井純常任理事・環境情報学部教授(写真2)は,「IPをベースとした仕組みなので,新しいサービスが生まれやすい。デジタル放送の世界に多様なコンテンツをもたらしたい」と意気込みを語った。
同じく会見に出席したKDDI 技術開発本部メディア技術開発部メディア1グループリーダーの猪澤伸悟部長は,「この仕組みを使えば,KDDIが進める携帯と固定の融合構想であるウルトラ3Gにおいて,放送波をアクセス回線として活用できる」との見方を示した