マイクロソフトは11月20日、アプリケーション開発・実行ミドルウエア「.NET Framework」の基本仕様「CLI(Common Language Infrastructure)」が、日本工業規格(JIS)X3016として公示されたと発表した。CLIは.NET対応プログラミング言語でアプリケーションを開発したり実行したりするための仕様を定めている。マイクロソフトのアプリケーション開発技術がJISとなったのは、2005年のC#に続いて二つめ。

 マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部でITエンジニア支援事業を手掛ける北川裕康 IT技術者アドバンステクノロジー本部長は、JIS規格化の意味を「Windows以外のプラットフォームにおける.NETアプリケーション実行環境の普及と、プラットフォーム間の相互運用性の確保」と説明する。CLIがJIS規格となったことで、「非Windowsプラットフォームを開発するメーカーに、より安心して.NETアプリケーションの実行環境を実装してもらえるのではないか」(同)。

 JIS原案作成委員会で委員長を務める、CSKホールディングスの黒川利明 総合企画部CSKフェローは「FORTRANなどのプログラミング言語やOSのAPIを規格化したことはあるが、JISがアプリケーションの実行環境を規格化したのは初めて」だという。.NET Framework向けのプログラミング言語には、マイクロソフトが提供するVisual C#やVisual Basicのほか、サードパーティ製のCOBOLなどがある。「CLIは特定のプログラミング言語に依存しないので、.NET Frameworkに対応した言語が、今後いっそう増えることが期待できる」(北川本部長)。

 北川本部長は、「特に日本メーカーが強い情報家電や携帯端末向けに、CLIが移植されることを期待している」と語る。これらは日本企業が独自に機能や技術の開発を進めてきた分野であり、食い込むのは簡単ではない。北川本部長もそれは承知している。「もちろんJIS規格になったからといって、一気に.NETが普及するわけではない。CLIによって、リッチなユーザー・インタフェースを持つアプリケーションを、容易に開発できるといった利点を訴えたい」(同)としている。