米シトリックスのマーク・テンプルトンCEO
米シトリックスのマーク・テンプルトンCEO
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 サーバーベースド・コンピューティングを実現するミドルウエア「Citrix Presentation Server(旧MetaFrame)を開発する、米シトリックス・システムズのマーク・テンプルトンCEO(最高経営責任者)兼社長に、今後の事業展開とシンクライアントの製品動向について聞いた。

――米国でのシンクライアントの導入状況と、シンクライアント関連の今後の製品展開を聞きたい。

 アメリカでも、企業の導入意欲は高く、導入数は伸びているが、導入コストが高くつくことや、ユーザーの自由度が低くなることなどから、爆発的に伸びているわけではない。ただし、この状況は変わると考えている。今後、登場する新しい技術によって、ユーザー企業の受け入れやすい環境が整うからだ。

 これまでのCitrix Presentation Serverは、主に特定の業務をこなすタスクワーカー向きのものだった。Presentation Serverを使って、Windowsサーバー上でアプリケーションを実行し、処理結果の画面をクライアントに転送する。シトリックス独自のICA(Independent Computing Architecture)プロトコルを使うことで、圧縮率を高めているのが我々の強みだ。

 この方法は、通常のパソコンと比べて利用できるアプリケーションの自由度が低い。コール・センターなどの定型業務には向いているが、非定型の業務には不向きな面がある。通常のパソコンと同様に使える、VMWareなどの仮想化ソフトを使ってサーバー上で仮想的なパソコンを生成する方式(仮想パソコン方式)や、ブレードPCによるシンクライアントとは異なる。

 仮想パソコン方式とブレードPVC方式は、いずれもサーバーやブレードPC上の処理結果の画面情報をクライアントの端末に送る仕組みで、基本的にRDP(Remote Desktop Protocol)という、ICAよりも伝送効率の低いプロトコルを使っている。シトリックスの新しい技術を使えば、これら2方式でもICAを使った効率的な画面情報の送信が可能になる。「Presentation ServerはWindowsターミナル サービスを効率よく利用するために使うミドルウエアで、仮想パソコン方式やブレードPC方式のシンクライアントとはまったく別の方式」と考えるユーザーもいるかもしれないが、そうではない。

 当社は新技術により、いずれの方式で効率的に画面情報を送信できるようにしていく。具体的には、2つの技術でこれを実現する。一つは、Presentation Server 4.0の追加機能として提供するもの。「Desktop Broker」と呼んでいる。Desktop Brokerが、仮想パソコンやブレードPCとクライアントとの間で、RDPプロトコルとICAプロトコルを変換し、クライアントとの間を伝送効率の高いICAでやり取りできるようにするものだ。モバイル用途などで効果があるだろう。

 もう一つの方法は「Project Trinity」と呼ぶ新製品である。Trinityとは「3」の意味だ。Trinityにより、クライアントとPresentation Serverとの間だけでなく、Presentation Serverと仮想パソコンやブレードPCとの間でICAを利用できるようになる。

 Desktop Brokerは、10月23日にアメリカで英語版を発表した。「サブスクリプション・アドバンテージ・アグリーメント」契約を結んでいるユーザーはダウンロードして利用することが可能だ。Project Trinityについては、来年製品を提供する予定である。これによりユーザー企業により幅広い選択肢を提供できるようになる。

――シトリックスはPresentation Server以外の製品ラインアップの拡充を進めている。今後の製品展開はどうなるのか。

 現在、我々が提供している製品群は、主に、アプリケーションの配信と、セキュリティ、ビジビリティ(可視化)関連の3分野に分けられる。Presentation ServerやWebアプリケーションの配布を高速化する「NetScaler System」、ストリーミング配信技術の「Project Tarpon」などがアプリケーション配信の分野。「Access Gateway」、「Application Firewall」、「Password Manager」がセキュリティ関連の製品群になる。アプリケーションのパフォーマンスをリアルタイムに監視する「EdgeSight」が可視化ツールに当たる。

 現在、当社の売り上げに占めるPresentation Serverの比率は約80%だが、成長率はそれ以外の新製品群の方が高い。Presentation Serverの成長率が年率15%程度なのに対して、新製品群は30~100%で伸びている。おそらく今後3年で、新製品群が成長し、売上構成比は50対50くらいになるだろう。

 もちろん、今出荷しているすべての製品について、機能を強化するための研究開発を積極的に実施していく。前述の三つの分野の中では、特にビジビリティ分野に積極的に取り組んでいかなければならないと考えている。