日本初のワイヤレスUSB製品の実力を検証した
日本初のワイヤレスUSB製品の実力を検証した
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 「ワイヤレスUSB」をご存じだろうか。一言でいうと、現行のUSBを無線化する画期的な新技術。パソコンや周辺機器がワイヤレスUSBに対応することで、ケーブル要らずで両者間をつなげるようになる。パソコンおよび周辺機器メーカーは、今年後半からワイヤレスUSBに対応した製品の研究や開発を急ピッチで進めている。対応製品が出そろえば、様々なケーブルの呪縛から解放され机の上はスッキリする。これは魅力的だ。このワイヤレスUSBに対応した日本初の製品が11月13日、ワイ・イー・データから出荷された。「ワイヤレスハブYD-300」(オープン価格で、実勢価格3万9800円)がそれである。編集部ではさっそく評価機を入手し、その実力を探った。

 YD-300について簡単に紹介しておこう。この製品は、ワイヤレスUSBに対応したハブと、パソコン側に取り付ける送受信機から成る。通常のUSBハブはパソコンとの間をUSBケーブルでつなぎ、ハブ側のUSB端子に各種の周辺機器をつなぐ。YD-300ではこのパソコンとハブの間のUSBケーブル部分を無線化したものだ。現在のパソコンはまだワイヤレスUSBの機能を備えていないので、パソコンのUSB端子に送受信機を挿し、ハブ側とワイヤレスで通信する。

 実験は、障害物のない広い場所で実施した。YD-300のUSBハブを1カ所に設置し、メモリーカードリーダーを接続。一方、ワイヤレスUSBの送受信機をノートパソコンに装着した。メモリーカードリーダーには容量100MBのファイルを収めたSDメモリーカードを挿し、そのファイルをノートパソコンへ転送するのに要した時間を計測した。同じ条件で3回行い、所要時間の平均値から実効速度を求めた。距離の変化による影響を探るために、USBハブとノートパソコンの距離を少しずつ変えて実施した。

実効速度は理論値に遠く及ばない

 今回の実験で判明したワイヤレスUSBの実力は、距離0m、つまりパソコンとハブが近接する場合で19Mbpsだった。ワイヤレスUSB規格は理論上、USB 2.0と同じ最大480Mbpsの転送速度をうたうだけに、少々残念な結果だった。

 実験結果が理論値に遠く及ばなかったのは、次のような原因が考えられる。まず実環境で期待できる速度は、様々なオーバーヘッドの影響でそもそも低くなる。有線のUSB 2.0でさえ、実効速度は最大200~250Mbps程度。ワイヤレスUSBの場合は無線のエラー訂正などが加わるため、さらに下がって最大150~200Mbps程度になる。どうがんばっても理論値の半分以下、悪ければ3分の1程度しか出ないのである。

 加えて、YD-300の構成では、ワイヤレスUSBの信号とUSB 2.0の信号を相互に変換する処理が大きなボトルネックになっている。つまり、メモリーカードリーダーとUSBハブとの間、送受信機とパソコンの間のそれぞれで、USB 2.0とワイヤレスUSBとの間の変換処理が発生している。そのため、ワイヤレスUSBの実力は約4分の1しか発揮されなかったわけだ。実際、YD-300が内蔵するワイヤレスUSBチップの開発元であるイスラエルのウィザーでは、「変換処理だけで実効速度は半分に落ち込む」と説明している。

 さらにもう一つの理由がある。YD-300が搭載するワイヤレスUSBチップは、実はワイヤレスUSBの最速モードをサポートしていない。最大モードは200Mbpsなのだ。以上3つの原因を整理すると、理論値が200Mbpsのチップは実環境では3分の1程度の速度になり、それがUSB 2.0変換のボトルネックによってさらに4分の1に落ち込む。計算すると、想定される実効速度は約17Mbps。実験結果にほぼ等しく、当然の結果が得られたと見るのが正しい。