写真 IDGジャパン主催の「Business Blog&SNS World」にて開催された企業のブログ活用に関するパネルディスカッションの様子
写真 IDGジャパン主催の「Business Blog&SNS World」にて開催された企業のブログ活用に関するパネルディスカッションの様子
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 大手町サンケイプラザで開催中の「Business Blog&SNS World」で11月16日,企業におけるブログ活用をテーマにパネルディスカッションが実施された。ユーザーとしてヤマハ,ベンダーとしてフィードパスとドリコムからパネリストが登壇。企業内のコミュニケーション・ツールとしてのブログを話題の中心として議論を交わした。

 フィードパスは,サイボウズや日立製作所が企業向けブログ製品のエンジンとして採用する「blogengine」などを開発するベンダー。ドリコムは企業向けブログや検索ソリューションにパッケージに注力している。ヤマハは社内外の情報発信にブログを活用。「Wiki」による情報共有も実施するなど,いわゆるWeb 2.0技術を取り入れている先進ユーザーだ。パネリストは,ヤマハから鞍掛靖マネージャー,フィードパスから小川浩取締役,ドリコムから内藤裕紀社長が参加(写真)。進行はビデオ・ジャーナリストの神田敏晶氏が務めた。

ブログが企業にもたらす“カオス”が革新の土壌に

 最初に進行役の神田氏がパネリストに投げかけた質問は,「企業内ブログとグループウエアとの違いは何か」というもの。これに対し小川氏は,ブログでは個人が気軽に情報を発信でき,情報が組織に浸透しやすい点でコミュニケーションの質が異なるという見解を提示。グループウエアをサプリメントに,情報を栄養にそれぞれたとえ,「本人はサプリメントなどで栄養を摂取しているつもりでも,実は足りていないというのはよくあること。グループウエアを導入した企業でも,従業員が100人を超えると,“しみ通る”ような密なコミュニケーションは取れていない」とした。ただしブログがグループウエアを補うサプリメントとして機能するには,「個人の自由な情報発信を許容するような企業風土の醸成が必要」と釘を刺した。

 話題が「導入の効果」におよぶと,神田氏は「ブログにアウトプットした文章の量が効果測定になるのでは」と発言。これに対し内藤氏は,数字では測れない心理的な効果を重視する姿勢を見せる。「私のように創業時からいる古参メンバーと入社間もない新参メンバーに対して,発言の場が等しく用意されているということこそが重要」と断言した。また「革新を起こすには組織をカオス(Structured Chaos)状態におくことが重要」という米グーグル上級副社長の言説を挙げ,発言力の平準化によるカオスをもたらすツールとしての側面を強調した。

 なお,セッション終盤に社外向けブログにテーマが移ると,神田氏は有名ブロガーが商品の紹介記事で企業から報酬を得ていたことでブログが“炎上”した例に言及。小川氏が「ユーザーを集めて商品の感想を聞くと,良い面を挙げようと時には嘘もつく。それが無いのがブログの良さで,報酬を与えては双方向になりえない」と主張する一方,内藤氏は「広告は広告であることを周知することでマーケティング手法として成立している。後2~3年も経てば,ブロガーに報酬を与える手法は当たり前になっているのでは」と過渡期である点を指摘する一幕もあった。