日立製作所の古川一夫社長
日立製作所の古川一夫社長
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 日立製作所は11月16日、高収益企業を目指す新経営方針を策定したと発表した。原子力発電所のタービン損傷にかかる補修費用の発生や、ハードディスク・ドライブ事業の不振などにより、2006年度中間決算で780億円の純損出に転落したのを受けたものだ。同社の営業利益率は現在1.8%程度(2006年度通期見込み)だが、新経営方針の下、2009年度までに5%に引き上げることを目指す。

 同社の古川一夫社長(写真)は、「日立の経営に必要なのは収益にこだわること」とし、赤字が続く事業からは撤退することを明確にルール化した。「ハードディスク・ドライブ(HDD)事業なども含めて、聖域はない」(古川社長)。具体的には、税引き後の同社独自の付加価値指標(FIV)で2年連続で赤字になった場合に、再建計画を立案。その計画が承認された後2年以内に黒字化しない場合には撤退する。FIVは、税引き後の事業利益から資本コストを除外したものをベースに算出した、日立独自の指標である。

 同社の収益を圧迫した、電力システム、薄型テレビ、HDDの3事業については、2007年度の営業損益の黒字化と、2008年度のFIVでの黒字化を目指す。古川社長はHDD事業に関して、「2006年の台数シェアは1~3月で14%、4~6月で15%、7~9月で17%と確実に上昇している。2007年は通期でシェア20%を実現すると同時に、黒字に転換させたい」とした。

 情報・通信事業全体としては、「ストレージとコンサルティングを強化することで利益率を向上させ、2005年度に5%だった同事業の営業利益率を2009年度には7%に増やす」(古川社長)計画である。

 高収益化に向けて、グループ会社の再編も進める。子会社同士の事業統合などを進め、連結子会社数を減らして経営の効率化を図る。同社の連結子会社は9月末時点で885社で、今年3月末の932社から50社程度少ない。これを2010年度までに700社程度まで減らす。

 研究開発分野では、中央研究所などコーポレートの研究員の15%を事業部門に配置する。ただし、要員全体では増員を進めていく。研究開発予算についても、今年度は連結売上高に占める割合が4.4%だが、2009年度には5.0%に引き上げる。このほか、開発期間を30%短縮して、製品の早期投入を実現する計画だ。