マイクロソフトは11月16日,Windows Vistaの販売政策に関するプレス向け説明会を開催した。同社は11月30日にボリューム・ライセンス版のWindows Vistaを発売するが,パッケージ版やWindows Vista搭載パソコンの発売は2007年1月30日になる。同社はWindows Vistaをアピールしながら,年末商戦における消費者の「Vista待ち」を避けねばならない難しい立場にある。

 同社プラットフォームビジネス推進本部の春原久徳氏は「10月の『WPC Tokyo』以降,パソコンがぱったり売れなくなりつつある。それでも,2007年1月以降は消費者向けパソコンのほとんどがWindows Vista搭載モデルになるので,Windows XP搭載パソコンを長く使いたい人にとって,年末商戦はWindows XP搭載パソコンを買う最後のチャンスになる」と年末商戦への配慮をにじませる。

 マイクロソフトは10月26日以降にWindows XP搭載パソコンを買ったユーザーに対して,Windows Vistaへの優待アップグレードを提供する「安心アップグレード」を開始している。ただし「Windows XP Media Center Edition」から「Windows Vista Home Premium」にアップグレードしたり,「Windows XP Professional」から「Windows Vista Business」にアップグレードするのが3150~4800円(パソコン・メーカーによって異なる)であるのに対して,消費者向けパソコンの主流である「Windows XP Home Edition」から「Windows Vista Home Basic」へのアップグレードが8400~9800円(同)であることから,お得感は今ひとつ乏しい。

 「量販店などのショップ・ブランド・パソコンは,OSをWindows XP Media Center Editionにして頂くことで,安心アップグレードを順調に展開できている。またDSP版(パソコン販売店でパーツなどと合わせて販売されるOEM版)のWindows XP Media Center Editionは,安心アップグレードの展開以降は好調で,ショップによっては前年比4000%というところもある」(春原氏)と語るが,苦戦は否めないようだ。

「パソコンの価格は2006年末が底値」

 特に,現在販売されているパソコンの多くが,Windows Vistaを快適に使う上で力不足であることも,「安心アップグレード」を訴求する上での足かせになっているようだ。現在,店頭に並ぶ90%のパソコンに,Windows Vistaが快適に動くことを示す「Windows Vista Premium Ready PC」のロゴが張られているが,それらの多くは「メモリーを1Gバイトまで増設したらPremium Ready PCになる」という条件付きのものであり,実際に1Gバイトのメモリーが搭載されているパソコンは,全体のまだ15%程度にしか過ぎない。

 こういった事情から,「Windows XPパソコンを買うなら,年末商戦が最後のチャンス。Windows Vista発売以降は,パソコンの単価も上がるだろうし,年末商戦が底値になる」(春原氏)という冒頭の発言になった。同社では年明け以降,Windows Vistaの販売促進活動を本格化する。

 消費者向けパソコンは,来年2月以降,Windows Vista搭載モデルが主流になると見られるが,企業向けパソコンではもっと長い期間,Windows XPパソコンが残り続けるだろう。マイクロソフトでは,パッケージ版のWindows XPをWindows Vistaの発売から1年間,OEM版のWindows XPを同2年間販売する。少なくとも2年間は,企業向けのWindows XP Professionalパソコンを購入できる可能性が高い。

 また,Windows Vista BusinessとWindows Vista UltimateのOEM版,DSP版,ボリューム・ライセンス版には「ダウングレード権」が存在する。つまり,Windows Vista Business搭載パソコンに,Windows XP Professionalをインストールして使える権利がユーザーにあるのだ。そのため,Windows XPパソコンの販売が終わっても,ダウングレード権を使えばWindows XP Professional搭載パソコンの調達は可能だ。現在も,販売が終わったWindows 2000やWindows NT 4.0を搭載するパソコンを,Windows XPからのダウングレードとして販売しているメーカーも存在している。

 春原氏はほかに,「Windows Vistaでは,Home Premiumが主流になる。Windows Vista Ultimateを初期搭載するパソコンも登場するかもしれない。DSP版のWindows Vistaの価格は公表できないが,Windows Vista Home Basic,Windows Vista Home Premium,Windows Vista Businessで,5000円刻みぐらいの価格差になるだろう」と説明している。