写真 ネットワークの中立性に関する懇談会の第1回会合の様子
写真 ネットワークの中立性に関する懇談会の第1回会合の様子
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 総務省は11月15日,「ネットワークの中立性に関する懇談会」の第1回会合を開催した。ネットワークの中立性とは,ネットワークの利用と設備コスト負担の公平性についての論点を指す。映像コンテンツなどによるトラフィック急増などで通信事業者やプロバイダのコスト負担が膨らんだことで,欧米や韓国では既に激しい議論が展開されている。今回,日本でも問題解決を目指した本格的な議論がスタートした。

 同懇談会は座長の林敏彦放送大学教授ら13人の識者で構成される。今回は,総務省の谷脇康彦電子通信事業部料金サービス課長が国内のブロードバンド普及の状況やコンテンツ・ビジネス,欧米での中立性議論の動向などを説明。その上で,いくつかの検討課題を挙げた。具体的には,(1)ネットワーク増強にかかるコストをどう負担していくのか,(2)ネットワークに影響を及ぼす特定のアプリケーションの利用をどこまで制限できるか──などである。

 これを受けて,懇談会のメンバーから積極的な意見が続出。中立性の議論の中でも大きな論点になると見られるコスト負担の公平性について,舟田正之立教大学法学部教授は「通信事業者がコンテンツ・プロバイダに対して課金するにしても根拠が必要。トラフィックのデータが料金の根拠になるのか」と,疑問を投げかけた。また,生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏は「ネットワークの中立性の議論は事業者間だけの話になりがちだが,ネットワークを使うさまざまな利用者の存在を意識する必要がある」と意見した。

 懇談会では,12月中旬に開催される第2回会合から3月下旬の第5回会合まで,大手通信事業者やコンテンツ配信事業者など22社によるプレゼンテーションと自由討議が行われる。同時に,日本データ通信協会が運営するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「iSpring」上に,有識者約100人で構成する非公開のコミュニティ「ネットワークの中立性に関するフォーラム」を立ち上げて,オンラインで議論を進める(関連記事)。

 また,懇談会の下に指定電気通信整備制度の見直しについて検討する「新しい競争ルールの在り方に関する作業部会」とP2P通信がネットワークに与える影響などを検討する「P2Pネットワークの在り方に関する作業部会」の二つの作業部会を設置して,月1回のペースで議論を進める。作業部会やフォーラムでの議論は懇談会にフィードバックされる。懇談会は2007年7月下旬に開催される第8回会合までに報告書をまとめる予定。