顧客に合った商品を提案するセイジョーの店長
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 首都圏を地盤とするドラッグストアのセイジョーは2006年9月期、売上高が約480億円、経常利益が約33億円と、通期の見込みこそ下回ったものの、増収増益を達成した。売上高経常利益率は前期より0.5ポイント落ちたが、それでも7.0%と、経営目標である7%以上の高水準を確保した。

 売上高の伸びや高い経常利益率を支えるのは、同社の会員カード「セイジョー・クラブカード」を持つ顧客のデータベース分析や、メーカーや卸にPOS(販売時点情報管理)データを提供して共同で売り場の棚割を決めていくシステム「セイジョーリンク」の取引先への浸透といった積極的なシステム活用だ。特にクラブカード会員数は前期に120万人を突破し、データベース分析に磨きがかかってきている。

 セイジョーのカード会員は非会員と比べて、買い物1回当たりの購入単価が1.7倍高いことが分析結果から分かってきた。中でも年間6万円(月額5000円)以上、セイジョーで買い物をしている「優良会員」は、非会員よりも購入単価が2.1倍高い。つまり、ロイヤルティーが高いカード会員の人数を増やしていけば、売り上げ増につながるとの数字的な裏づけが出た。そこで各店の店長には、「カード会員の獲得に向けた勧誘活動を積極的に実施するように」と指示を出している。

 2006年春には、分析結果を次の販売につなげるための仕組みを用意した。例えば、ある属性の会員が店舗に来たら、特定商品のサンプルや次回買ってくれそうな商品の割引券をレジで手渡すといった店員への「合図」をPOSレジから出せるように、システムに一部変更を加えた。

 このように「個客に合った商品サンプルや割引券を笑顔で手渡せたり、お勧めの言葉がレジ店員の口から出ることが、当社と他店、さらにはコンビニエンスストアとの違いだ」(中山和亮・営業本部販売促進部長)。サンプルを手渡せば、その場で顧客に質問されることもあるので、店員は事前に自宅で商品知識を学んでおけるように、eラーニングの仕組みも用意した。

 売上高に占めるカード会員の購入比率は既に55%に達し、しかも毎年約5%ずつ上昇を続けている。当面の目標は比率を70%まで高めることで、「3年以内には達成したい」(中山部長)という。地域に密着した郊外型店舗では既に比率が70%を超えるところも出てきているが、セイジョーの特徴である都市型店舗では、特に若者の会員比率が低い。ここでどれだけの会員を増やせるかが、セイジョーが躍進を続けるための次なる課題となる。

ネット通販は一番小さな店舗並みの売り上げに

 2006年3月にはインターネット通販「セイジョーeショップ」も開始した。まだまだ規模は小さく、売上高への貢献は限られるが、それでも現時点では毎月500件ほどの注文が入るようになった。このペースで行けば、開店から1年後の来春にはセイジョーの一番小さな店舗の売上高と同等の売り上げが見込めるところまではきたという。

 セイジョーが前期、ネット通販にまで進出した背景には、ネット通販で成長するケンコーコムが年間約50億円を売り上げる規模にまで拡大するなど、「顧客の一部が確実にネットに流れているという危機感があるからだ。何もしないでいれば、当社の売り上げが落ちていくことは目に見えている。ネット通販で店舗を補完できればと考えている」(中山部長)。今期中にセイジョーのネット通販がどこまで伸びるのか、注目したい。