松下電器産業が12月9日に発売する高速PLCモデム。写真左が2台セットの「BL-PA100KT」,同右が増設用の「BL-PA100」。
松下電器産業が12月9日に発売する高速PLCモデム。写真左が2台セットの「BL-PA100KT」,同右が増設用の「BL-PA100」。
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 松下電器産業は11月13日,物理速度190Mビット/秒の高速電力線通信(PLC)モデムを発表した。国内向けの製品については,アマチュア無線および短波放送「ラジオNIKKEI」の使用周波数帯を利用しない。実効速度はUDP時で80Mビット/秒,TCP時で55Mビット/秒という。予想実売価格は2台セットの「BL-PA100KT」が2万円前後,増設用の「BL-PA100」が1万3000円前後。12月9日に販売を開始する。

 BL-PA100は,100BASE-TX対応イーサネット・ポートを一つ装備。電力線によるLANを構築できる。最小構成は親機と子機の計2台。それぞれをコンセントに接続し,暗号設定用のボタンを押すとAES(128ビット)プロトコルによる暗号化が自動設定される。最大接続台数は親機を含めて16台。最大通信距離は150mである。

 国内向け高速PLC機器の通信方式としては,松下が開発したHD-PLC,米インテロンなどのHomePlug,スペインのDS2などがある。ロジテックがDS2のチップを採用した製品を12月投入に予定しているほか,シャープも2007年春にHomePlug対応PLCモデムを発売する計画。異なる方式のPLC機器が同じ電力線に混在すると,相互接続ができないばかりか干渉による速度低下を引き起こす。現時点では干渉を避けるための「共存仕様」を策定している段階。こうした策定作業で優位に立つため,当面はデファクト・スタンダードを目指す競争が激化しそうだ。

 今回発売するBL-PA100は「使い勝手を重視」(製造を担当するパナソニック コミュニケーションズの藤吉一義社長)。パソコンで設定作業をすることなく暗号化通信ができる仕組みを用意したほか,10Mビット/秒以下,10M~30Mビット/秒,30Mビット/秒以上の3段階で実効速度をLED表示する機能を搭載した。このほか「HD-PLC組み込み機器開発用のツールの提供やHD-PLCの相互接続を検証する部隊を設ける」(同氏)ことでデファクト・スタンダードの座を狙う。

 今後,松下グループでは松下電工が2007年3月にHD-PLC内蔵の電源タップを発売するほか,パナソニック コミュニケーションズが2007年内にHD-PLC内蔵Webカメラを投入する。AV機器への組み込みや冷蔵庫や洗濯機などのいわゆる白物家電へのHD-PLCチップおよびモジュールの搭載を推進し,2010年までに自社製のHD-PLC搭載機器および外販するHD-PLCチップ/モジュールの合計で年間200億円の売り上げを目指す。