写真:Windows XP上で動作するARMエミュレータ
写真:Windows XP上で動作するARMエミュレータ
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 マイクロソフトは11月13日,組込用OSの新バージョン「Windows Embedded CE 6.0」の出荷を開始したと発表した。新版では,カーネルのソース・コードを100%公開するようにしたほか,「Visual Studio 2005」に統合可能な開発ツールと,Windows用のARMプロセッサ対応Windows Embedded CE 6.0エミュレータを提供する。

 マイクロソフトは携帯デバイス向けに,OSの核となる「Windows Embedded CE」と,シェルやアプリケーションを追加した「Windows Mobile」を販売している。「PocketPC」や「Automotive」,「Portable Media Center」など様々なエディションが存在するWindows Mobileに関しても,近い将来「Windows Embedded CE 6.0」をベースにしたバージョンがリリースされる予定だ。Windows Embedded CE 6.0の適用分野についてマイクロソフトは,IPセットトップ・ボックスやGPS,Windows Vistaに対応した無線プロジェクタなどを挙げている。

 Windows Embedded CE 6.0では,(1)ネットワーク接続機能,(2)パフォーマンスとセキュリティ,(3)開発環境---が特に強化されている。

 ネットワーク接続機能に関しては,従来のBluetoothや無線LAN,有線LANに加えて,WPA2といったセキュリティ・プロトコルや,「RTC 1.5」といったSIPのプロトコルなどにも対応した。

 パフォーマンスに関しては,従来のWindows CEで同時に実行できるプロセス数が最大32個だったのに対して,Windows Embedded CE 6.0では最大3万2000個のプロセスを同時実行できるようにした。また,プロセスごとに割り当てられる仮想メモリーの最大容量も,従来の32Mバイトが2Gバイトに拡大している。

 開発環境に関しては,従来は,「Platform Builder」と「Visual Studio」という2つの開発ツールがあった。Windows Embedded CE 6.0では,開発環境はVisual Studio 2005に統一されている。マイクロソフトは「シェアード・ソース・プログラム」の参加企業に,Windows Embedded CE 6.0カーネルのソース・コードを100%公開しているが,カーネル・コードの修正や,デバイス・ドライバの開発などもVisual Studio 2005上で実行できる。

 マイクロソフト執行役常務の佐分利 ユージン氏は「これまでは,カーネル・コードの50%程度しか公開していなかった。それでもカシオ計算機は,同社のハンディ・ターミナルに,画像処理やネットワーク関連のソース・コードを改変して高速化を図ったWindows CEを実装するなど,実績を上げている。カーネルを変更した場合も,変更点などを公開する必要はない」と語っている。

 またマイクロソフトは,ARMプロセッサ用のWindows Embedded CE 6.0エミュレータも提供する。携帯デバイスの開発者は,Windows OS上で,Windows Embedded CE 6.0用ソフトウエアをテストできるようになる(写真)。