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 マイクロソフトは11月13日、組み込み機器向けOSの最新版「Windows Embedded CE 6.0」の出荷を開始した。同社の佐分利ユージン執行役常務(写真)は、「Windows CEは、今年で登場から10年を迎える。最新版であるバージョン6.0は、第2のブレークスルーとも言うべき大きな機能強化を果たした」と、新版をアピール。具体的な強化ポイントとして、様々なネットワークとの接続性、パフォーマンスや開発効率の向上、ソース・コード公開範囲の拡大を挙げた。

 一つめの強化点であるネットワークとの接続性については、従来のBluetoothやWiFi、イーサネットといったネットワーク機能に加えて、IP電話の標準プロトコルであるSIP(Session Initiation Protocol)を使った通信機能を装備。WPA2準拠のセキュリティ機能、VoIPのQoS機能なども新たに追加した。

 二つめのパフォーマンスや開発効率の向上については、「開発者からのフィードバックを基に、カーネルを一新した」(佐分利執行役常務)。これにより、同時実行できるプロセス数を32から3万2000に、各プロセスが利用できる仮想メモリーの容量を32Mバイトから2Gバイトへ、それぞれ拡張した。「モバイル情報端末や組み込み機器が扱う情報は、どんどん複雑で膨大になっている。Windows Embedded CE 6.0で、多様なデバイスの要件に十分対応できるだろう」(同)。

 三つめの強化点となるソース・コード公開範囲の拡大とは、同社のライセンス施策である「シェアード ソース プログラム」に基づく取り組みのこと。Windows Embedded CE 6.0から、カーネルのソース・コードをデバイス・メーカーに対してすべて公開することにした。「従来はカーネルの半分程度しか公開していなかった。今回はカーネルに加えて、ファイル・システムなどの重要な部分も公開する」(佐分利執行役常務)。

 シェアード ソース プログラムでは、公開するソース・コードの知的財産権をすべてマイクロソフトが管理する。デバイス・メーカーがソース・コードを改良した場合でも、改良部分を公開する義務はない。「オープンソースで一般的なGPLと違って、他社との差別化要因を公開する必要がないため、メーカーやデベロッパーに有利だ」(佐分利執行役常務)。

 マイクロソフトの梅田成二モバイル&エンベデッドデバイス本部長は、経済産業省が実施した組み込みソフトウエアの開発実態調査を引用する形で、Windows CEのシェアを紹介した。それによると、TRON系が26%、Linux系が13%。Windows CEを始めとするWindows系は、Linuxとほぼ同じ13%。「Windows CEが得意とするのは、マルチメディア関連の機能。IP通信のセットトップボックスや通信カラオケなど、強みを生かした分野でシェアを拡大したい」(同)という。