写真 野村総合研究所の嶋本正常務執行役員
写真 野村総合研究所の嶋本正常務執行役員
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野村総合研究所(NRI)は11月10日,都内で企業ユーザー向けの「ITロードマップセミナーAutumn 2006」を開催した。テーマは企業におけるブログやSNSなど,いわゆるWeb 2,0技術の活用である。

 NRIはセミナーで,2011年までの企業内Web 2.0のロードマップを披露した。現在はコンシューマ向けのマーケティングに活用する段階だが,2007年度から2008年度にかけて企業向けのブログ/SNS製品が充実し,企業内利用が進むと分析。2009年度からは一般化していくとの見方を示した。

 ただ,「コンシューマ市場で成功しているブログ/SNSを真似て器だけを企業に導入しても失敗する」(嶋本正常務執行役員)と指摘。効果を得るための三つの条件を列挙した(写真)。具体的には,社員によるブログ/SNSの活用「スキル」向上,業務で積極的に活用する「カルチャー」の醸成,個人の活動を統制する「ガバナンス」の整備である。例えばカルチャーについては,「ブログやSNSによる情報共有の効果を高めるには,ある程度のユーザー規模が必要」(技術調査部の亀津敦副主任研究員)と説明した。

 このうちスキルについては,「Web 2.0のソフトウエアを導入することで,徐々に敷居は低くなる」(技術調査部の田中達雄上級研究員)と,次第に解決されるとの見方を示した。カルチャーについては,「(企業文化として根付かせるには)時間がかかる」(同氏)と難しさを指摘した。

 ガバナンスの整備は,従業員がブログを公開する際のガイドラインの策定という人的作業と,現時点で不足しているセキュリティ機構を追加する技術的要件が柱。特にセキュリティについては,「書き込みの内容をリアルタイムにチェックして,不適切な発言を即座に検知するシステムなどが必要」(田中氏)とした。

 こうした分析の一方でNRIは,セキュリティ面から企業内ブログ/SNSの整備が急務であるとする。例えばコンシューマ向けのブログ/SNSが浸透するにつれ,同期入社の従業員同士のコミュニケーションに外部SNSを利用したり,Webブラウザのブックマークを共有するソーシャル・ブックマークを公開設定のまま利用したりといったことが起こりかねず,「情報漏えいのリスクが生じる」(亀津氏)という。