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 インドに大規模開発拠点を置くITサービス会社、米コバンシスが日本市場における営業活動を強化している。受注拡大に向け、日本人技術者や営業担当者の採用にも動く。アジア・パシフィックおよび中東担当副社長のラジェシュ・ナラシムハン氏(写真)に日本市場への取り組みなどを聞いた。

――日本向けオフショア開発では中国のほかベトナムが急進しており、物理的に遠いインドは不利な印象が強まっている。
 確かに、ベトナムやブラジル、アイルランド、イスラエル、そして東欧といった地域は脅威を感じる競争相手だ。しかし、ベトナムやその他の地域とのコスト競争をする気はない。過去のオフショア開発は確かに、コストがキーワードだった。しかし現在、当社が顧客に提供しようとしているのはバリュー(価値)、すわなち顧客が市場でリーダーになれるようITを使って支援することだ。短時間で企業が変革しなければならない現在は、技術的なソリューションではなく、経営面でのソリューションが求められている。

――提供できるバリューの具体例はなにか?
 品質を高めるためのプロセスを提供できることだ。その意味で、日本版SOX法対応は大きなビジネス機会である。日本は「品質第一」のイメージが強かったが、ソニーの電池問題にみられるように、世界市場でトップになるために品質を落としているかもしれない。さらにIT分野ではプロセスが不十分だ。当社は米国市場で株式公開していることもあり、種々のプロセスを実現できている。ここでの経験・ノウハウが顧客のバリューにつながるだろう。

――印大手ITベンダーは最近、単純な開発請負などを受注ないと聞く。
 その通りだ。バリューを提供する会社としては、単なるソフト開発やコールセンターの請負といった単純な仕事はもう受けたくない。バリューを生み出すための人材獲得競争は激しく、人件費負担が高まっていることも、その背景にはある。インドには様々なITベンダーがあり、ソフト開発特化の会社もあるが、グローバルに事業展開するインドの大手20社は、ほぼ同じ考え方だろう。

――ならば、開発外注の側面が強い日本市場を攻める必要はないのではないか。
 確かに、日本の発注プロセスが独特な点など参入障壁はある。だが、日本は世界第2位のIT大国であり無視は出来ない。また、困難な市場に挑戦し成功することがリーダーの条件だろう。加えて、当社は東京工業大学とパートナーシップを結び、人材教育などに取り組んでいるが、日本人技術者の才能にも興味を持っている。グローバル企業である当社は、社員もグローバルでなければならないと考えており、全世界から優秀な人材を集めている。