ヤマハ発動機のプロセス・IT部ITグローバル戦略グループの鈴木満義グループリーダー(左)と、YMSLならびにYMSL・インディアの寺井康晴社長(右)
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 今年9月、情報システム子会社のヤマハモーターソリューション(YMSL)が、インドで二輪車を製造するヤマハモーター・インディアが出資する情報システム会社の株式を75%取得し、「YMSL・インディア」とした。インドに加え、欧州や米国にあるヤマハ発の生産や営業拠点のシステム開発を担っていく予定だ。

 既に日本をはじめとしたアジア向けの開発には、中国にYMSL・アモイを1999年に設立している。中国とインドにおける2極の開発体制を構築することで、将来的に情報システムの開発コストが3割削減できるとみている。また、自前でヤマハ発動機のビジネスに精通するシステム技術者を養成することで、ノウハウの蓄積も目指す。

 ヤマハ発動機は、売上高の87%(2005年12月期)が海外事業によるもので、連結子会社だけでも77社あるなどグローバル化が進んでいる。一方、事業を支える情報システム部門は、各拠点が独自に運営していた。各社がそれぞれITベンダーを選定して独自に構築していたため、効率化が求められていた。

 その体制を是正するため、ヤマハ発動機は連結子会社も含めた情報システム部門の役割分担を進めている。本社のプロセス・IT部が企画・立案を、YMSLがシステム開発や運用を担うのがポイントだ。今回のインドにおけるシステム会社の設立はその一環。「集中して開発することで内部統制も効くし、品質も向上する」とヤマハ発動機のプロセス・IT部ITグローバル戦略グループの鈴木満義グループリーダーは話す。

 YMSL・インディアは、開発力向上のために、まず1年間かけてヤマハモーター・インディアの生産管理と補修部品のシステム導入を担当する。インドは優秀なシステムエンジニアが豊富にいることで知られているが、「(ヤマハ発の)業務知識が足りない」(YMSLならびにYMSL・インディアの寺井康晴社長)のが現状だ。生産管理システムは導入した後も毎日のように調整やメンテナンスが必要な「奥が深い」(同)システム。生産現場とのやりとりを通じて、開発メンバーの業務知識を深めてもらう。

 生産管理と補修部品の2つのシステムはヤマハ発動機がグローバルで利用しているシステム。YMSL・インディアはヤマハ発動機が標準的に利用しているシステムの導入を経験することで業務知識が身に付き、米国や欧州の拠点向けへの開発もしやすくなるとみている。

 今回、YMSL・インディアで取り組んでいる開発力アップ法は、1999年に中国に設立した開発拠点を軌道に乗せたときと同じ方法だ。

 中国国内にあるヤマハ発動機の生産拠点の生産管理システムなどの開発・導入を通じて、業務プロセスや開発手法を身に付けていった。さらに、タイなど東南アジア地域における生産拠点のシステム開発の際に日本のメンバーと共に開発し、保守段階になると中国の開発拠点だけで担える体制を確立した。今回のインドでも同様の手法を踏襲していくという。