総務省は政策立案の手法にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を採用することを明らかにした。11月15日から始まる「ネットワークの中立性に関する懇談会」で,行政担当者と有識者,通信事業者などが意見交換する場としてSNSを活用する方針だ。懇談会の配下に設置するPtoP(ピア・ツー・ピア)に関する作業班でもSNSを意見集約の場に使う。なお,懇談会の配下には,PtoPに関する作業班のほか,ドミナント規制に関する作業班も設置する見通しだ。

 総務省が利用するのは,日本データ通信協会が11月9日から試験運用を開始した「iSpring」。iSpringは,情報通信分野における学術研究や政策立案などの支援用SNSである登録者からの招待があればSNSに新規に登録でき,総務省が登録に何らかの制限を課すことはない。具体的な政策議論は,iSpring上にテーマ別に立ち上げるコミュニティで行う。

 ネットワークの中立性に関する懇談会では,構成員12人と通信事業者やコンテンツ配信事業者など22社,総務省の担当者ら約100人でiSpring上にコミュニティを立ち上げて議論する。コミュニティでの議論の内容は事業者の利害に関する情報を含むため,コミュニティの参加者以外には公開しない。

 一方,PtoPに関する作業班でもコミュニティを立ち上げる。作業班の構成員や総務省の担当者のほか,総務省が認めた関係者を多数加えて議論する予定で,コミュニティの内容はiSpringの登録者であれば見られるようにするという。PtoPに何らかの規制をかけるのが目的ではなく,社会的な合意形成が狙いのため公開するという。

 行政で政策立案にSNSを活用するのは今回が初めて。総務省では,行政と有識者,通信事業者などの業界関係者の意見交流の場としてSNSを有効活用したい考えだ。情報通信分野の有識者は,技術革新の速さと情報源の少なさから,他の業界の研究者に比べて人数が少ないという問題がある。今後の政策立案や国際的な議論を進めるためにも,研究者への情報提供と人的なネットワーク強化が求められている。また,民間事業者間のパイプを構築する狙いもある。

 iSpringの利用は総務省から始まるが,今後は他省庁での利用も進む見通しだ。