TISは11月9日、2007年3月期の中間決算を発表した。連結ベースで、売上高は前年同期比4.9%増の1030億3400万円、営業利益は同0.6%増の36億2500万円。前年同期の減収減益から増収増益に転じた。

 増収の理由について同社は、まず同業他社と同様に金融業や製造業でIT投資が増えたと説明する。このほか、クレジット・カード会社の大型案件が進行中であることを挙げる。

 TISは昨年上期、ソリューションサービス事業の不振により、全体で1.7%の減収となった。同事業は今年も前年同期比で0.2%しか売り上げを積み増せなかったため、同社はこの10月からてこ入れを開始。二つの策を実施している。

 一つ目は、営業力強化に向けた営業推進本部の新設。岡本晋社長自らが本部長を務める。既存顧客だけでなく、「もっと外へ勇気を持って営業に出て行かなければならない」(岡本社長)。二つ目が、クレジット業界向けのパッケージ・ソフト「CreditCube」のリニューアルだ。CreditCubeはシステム基盤とコンポーネントから成る。

 リニューアルの理由について岡本社長は、「最近はサービス業などがクレジット業務を手がけるようになり、より多様なコンポーネントが必要になったため」と説明する。中核機能は再利用するものの、リニューアル作業には約500人月を投入。今年度中に完了させるとしている。すでにCreditCubeのリニューアル版を使う、数億円規模の開発案件を受注済みで、08年中の稼働を見込んでいる。

 営業利益は、50.2%の減益となった前年同期と同水準にとどまった。低調の主な要因は、TISが受託しているJCBの基幹システム刷新プロジェクトにある。このプロジェクトのうち、JCBの加盟店を管理する「アクワイアリング機能」の開発とテストを子会社のユーフィットが担当したが、上期に計画外の人員を追加して赤字となったことが響いた。

 JCBのプロジェクトでTIS本体が開発を担当する部分は、仕様が確定済みで、単体テストも予定通り終了したという。「計画通り07年度内には開発を完了する」とするものの、「負荷テストやデータ移行にコスト増があるかもしれない。今後2~3カ月で見極める」と、岡本社長は収益悪化もありうる含みを持たせた。

 ユーフィットの赤字により、TISは今年7月に通期の営業利益を145億円から130億円に下方修正している。さらに今回、営業利益について7億円の計画未達を予想した。それでも岡本社長は、来期の業績見通しは明るいとしている。

 「クレジット・カード会社の大型案件が稼働することで、技術者がより高収益な他の案件を手がけられるようになったし、TISコンサルティングをTIS本体に統合したことで、コンサルティグから運用までワンストップで提案できるようになった」(同)というのがその理由だ。さらに、不採算案件を出さないための対策を講じている。プロジェクト開始後2カ月で、その後の継続について可否を審議する「プロジェクト継続審査制度」を開始した。