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 ソフトバンクモバイル 代表執行役社長兼CEOの孫正義氏は、自社ブランドで販売している携帯電話へのSIMロックについて、携帯電話端末代金の分割払いが完済した後に解除することも検討に値するとの考えを示した。2006年11月8日に開催されたソフトバンクの中間決算説明会で語った。

 説明会の質疑応答において、「新スーパーボーナスによる分割払いを完済した端末に対して、SIMロックを解除する考えはあるか」との問いに対し、「端末代金を回収し終わった後であれば、理屈的にはあり得るかもしれない。これまで考えたことがなく、今言われたばかりなので即答はできないが、仮にそうした場合のデメリットがないかなども含め検討していく」と回答した。

 SIMロックは、携帯電話を特定の通信事業者との契約でのみ使用可能にする仕組みで、国内の携帯電話事業者3社いずれも導入している。例えばNTTドコモの携帯電話は、仕様上はソフトバンクモバイルの携帯電話網に接続して通話・通信することが可能だが、NTTドコモのSIMカードを挿した場合のみ動作し、ソフトバンクモバイルや海外の通信事業者のSIMカードを挿しても機能しないようになっている。

 SIMロックが解除された、いわゆるSIMフリーの携帯電話は、海外では広く流通しているが、国内ではノキア・ジャパンが販売している一部機種を除き、一般にはほとんど流通していない。携帯電話がSIMフリーになると、同じ通信方式を採用した通信事業者間であれば、契約する事業者を変更しても従来使用していた携帯電話をそのまま使い続けることができ、新たに携帯電話を買い直す必要がなくなる。また海外渡航時に、海外の通信事業者が提供するプリペイド方式のSIMカードなどを挿して安価に通話・通信できるようになる。

 一方、これまで国内の通信事業者は、携帯電話の販売店に対し販売奨励金(インセンティブ)を支払い、携帯電話の販売価格を本来の価格より低く抑え、差額を通話料収入で補う事業モデルを続けている。総務省の調べによると、インセンティブの平均単価は4万円程度であり、通話料の約1/4がインセンティブの原資に回されているという。携帯電話へのSIMロックもこうした事業モデルの一環で、例えば1円などの低価格で携帯電話を購入した人が、短期間で自社サービスを解約して他社サービスへ移り、携帯電話代金が回収できなくなることを防ぐ目的がある。

 SIMロックが解除されると、こうしたインセンティブを前提にした事業モデルが根本から覆る可能性がある。特にNTTドコモは、最大手で携帯電話の販売台数が多いことに加え、ソフトバンクモバイルと同じW-CDMA方式を採用しているため、仮にソフトバンクモバイルがSIMロック解除に踏み切れば、その影響を最も強く受ける可能性が高い。