SXシリーズ モデルSX-8R
SXシリーズ モデルSX-8R
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 NECは2006年11月7日,大阪大学サイバーメディアセンターから同社のベクトル型スーパー・コンピュータ「SX-8R」20ノードを受注したと発表した。処理性能は20ノード合計で5.3テラFLOPS(1秒間に5.3兆回の浮動小数点演算)に達し,SXシリーズの事例としては国内最大のシステム規模になる。

 2001年1月に稼働を開始した大阪大学サイバーメディアセンターの現行システムはNEC製のSX-5/128M8。性能は8ノード構成時に1.28テラFLOPSであり,このうち6ノードを同センターで使用している。今回新たにSX-8Rを20ノード追加して性能を高める。また,2年後には次期SXシリーズを追加導入して合計で20テラFLOPSを超える見込みだという。

 今回受注したSX-8Rは,NECが2006年10月に販売を開始したベクトル型スーパーコンピュータの最新機種である。2004年10月に出荷したSX-8と比べ,ベクトル加算器と乗算器の数を倍増させたことで,プロセサあたりの能力を2倍以上の35.2ギガFLOPSに高めている。価格は月額で約121万円からで,NECでは出荷後1年間で200システムの販売を見込んでいる。

 ベクトル型コンピュータは,ベクトル演算に適した専用プロセサであり,プロセサとメモリー間のデータ転送速度を高くできる特徴がある。あらかじめ解析データを分割することが難しい用途において,解析データを複数プロセサで共有する使い方に適する。これに対して,汎用プロセサであるスカラー型の場合は,グリッドのようにあらかじめ解析データをプロセサごとに分割し,処理を独立させる使い方において,ハードウエアの製造コストを抑えるとともに,汎用OSやアプリケーションを動作させられる利点がある。

 NECを除くメーカー各社がベクトル型からスカラー型へと移行しているのに対し,NECはItanium2とLinuxを用いたスカラー型の「TX7シリーズ」に加えて,ベクトル型の「SX-8シリーズ」の生産を続けている。