写真:米Symantecのジョン・トンプソンCEO
写真:米Symantecのジョン・トンプソンCEO
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 米SymantecのCEOであるジョン・トンプソン氏(写真)が11月2日,東京都内で記者会見を行った。トンプソン氏は「Windows Vistaのセキュリティ強化に関して,Symantecが欧州連合(EU)の公正取引当局に苦情を申し立てた」とされる問題に関して,「正式な申し立てはしていないが,EUとコミュニケーションはとっている。また日本を含む各国の公正取引委員会との間で,Microsoftの振る舞いに関する話し合いはしている」と語った。

 記者との質疑応答は,以下の通りである。

--これまでは,Windowsの標準バックアップ・ソフトやボリューム管理ソフト,クォータ管理ソフトがVeritas(Symantecが買収)製であるなど,MicrosoftとSymantecの関係は良好だった。しかしWindows Vistaでは,これらのソフトがSymantecからのOEMにならないといわれている。また一方で,第三者によるWindows Vistaのカーネルの改変を認めない「パッチガード機能」に関して,Symantecが欧州の公正取引当局に苦情を申し立てたとも報道されている。SymantecとMicrosoftの関係について聞かせてほしい。

 トンプソン氏:「Microsoftは当社の重要なパートナだ。旧Veritasは,売り上げの半分をWindowsプラットフォームで稼いでいたが,旧Symantecではその比率は95%にも上っていた。Microsoftとの関係は今後も継続する。しかし,Microsoftがファイル・システムやボリューム・マネージャ,クラスタ・システムを提供するとしても,技術の選択は顧客自身が行うべきだ」

 「質問の件に関して,EUや他の政府機関に対して,Symantecが正式な苦情を申し入れたという事実はない。しかし,EUとはコミュニケーションをとっている。日本を含む各国の公正取引委員会とも,Microsoftの振る舞いや,同社がセキュリティ市場に関心を持っていることに関して,話し合っている」

 「われわれが主張しているのは以下の3点だ。まず,顧客が選択肢を求めているということだ。公正取引委員会などの政府組織は,サード・パーティとMicrosoftが対等に競争できる状況を作り出すことによって,顧客の選択肢を保護すべきだと考えている。2点目は,Microsoftが今後も,従来と同様の機能や情報を,競合製品にも提供すべきだということだ。3点目は,Windows自身のイノベーションのためには,今後もサード・パーティに対して制約のないカーネル・アクセスを保証すべきだという点だ。Microsoftは64ビット版のWindows Vistaで,サード・パーティがカーネルを変更できない『パッチ・ガード機能』を搭載するといっている。しかし,セキュリティのイノベーションのためには,悪人だけでなくわれわれサード・パーティも,カーネルにアクセスできるようにするべきだ」

--Microsoftがパッチ・ガード機能に関して方針を変えたのは,Symantecが申し立てたからではない,と主張するのか?

 トンプソン氏:「その可能性(SymantecがEUと話し合いを持ったことが,Microsoftの方針変更を呼んだこと)は否定していない。またわれわれは,Microsoftの最近の発言を心強く思っている。つまり,Microsoftがサード・パーティに対して,Windows Vista用の新しいAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を提供すると言っていることや,Windowsディフェンダーをオフにしたり,Windows Vistaのセキュリティ・センターをオフにしたりできるAPIを提供する,と言っていることを歓迎している」

 「Microsoftはこれまで,(Windows Vistaにおけるセキュリティ仕様を変更するという)意思を表示していなかった。われわれに対してカーネル・アクセスを与えるか否かについても,ポジティブな動きが見られる。Microsoftの発言や行動を,今後も見守りたい」

--Microsoftがセキュリティ対策ソフト市場に進出することを踏まえて,多くのアナリストがSymantecやトレンドマイクロ,米McAfeeには値下げが必要だと主張している。

 トンプソン氏:「われわれは,値下げが必要ではないと思っている。そもそもMicrosoftはまだセキュリティ対策市場に進出できていない。それにウイルス対策ソフトは非常に競争が激しい分野だ。従来も無償のウイルス対策ソフトが存在したが,それでもわれわれの業績は順調だった。Microsoftが進出してきても,これまで通りの好調さを維持できる」