ウィルコムのPHSと携帯電話事業者3社の3Gデータ通信をそれぞれ組み合わせた3商品を紹介する日本通信の田島執行役員
ウィルコムのPHSと携帯電話事業者3社の3Gデータ通信をそれぞれ組み合わせた3商品を紹介する日本通信の田島執行役員
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 MVNOの先駆者である日本通信が,一向に進まない第3世代携帯電話のMVNOに業を煮やし,契約締結前にサービスを発表する“荒技”に出た。

 サービス名は「Doccica(ドッチーカ)」。ウィルコムのPHSと携帯電話事業者の第3世代携帯電話のデータ通信をセットにした定額データ通信サービスだ。携帯電話事業者ごとに商品をを準備している(写真)。日本通信がMVNOとして,複数の移動体通信事業者の設備を借りて提供するため,ユーザーは日本通信と契約するだけで済む。3G携帯の高速性とPHSのエリアの広さを組み合わせることで,既に提供中のウィルコムPHSのMVNOサービスよりも利用範囲を広げた。

 だが,NTTドコモ,KDDI,ソフトバンクテレコムの3携帯電話事業者は,これまでMVNOに応じていない。かろうじてセコムの「ココセコム」があるくらいだ。このためドッチーカのサービス提供時期は「携帯電話事業者のどこか1社と相互接続完了から1カ月以内」という変則的なもの。料金も「6カ月間使い放題で15万円~20万円。携帯電話事業者網との接続料金が決まるまでは確定できない」(田島淳・執行役員)という。

 日本通信が携帯電話事業者との契約が締結できていないにもかかわらずドッチーカの商品化を発表したのには,,MVNOのメリットを具現化した商品を市場に提示することで,MVNOを一気に進めたいという思惑がある。福田尚久・常務取締役CFOは,「総務省が9月15日に公開した新競争促進プログラム2010でもMVNOの促進をうたっている。これまで携帯電話事業者との協議を内密に続けてきたが,今後は透明性を持ってやっていきたい。最悪の場合,紛争処理委員会に持ち込むことも辞さない」と語気を強めた。