羽田空港内にある京浜急行電鉄の新駅「国際ターミナル駅(仮称)」の工事現場。地下に駅ができる。上を走る東京モノレールも新駅を建設する
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羽田空港プロジェクトを担当する(左から)宮坂岳氏、新保貴光氏、渡辺正行氏
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 京浜急行電鉄の羽田空港プロジェクトが本格化している。2009年12月(予定)の羽田空港国際線ターミナルビル開業に合わせて、新ビルの地下(現在の羽田空港駅と天空橋駅の間)に新駅「国際ターミナル駅(仮称)」を建設する。総工費は150億円を見込む。今年6月に着工し、現在、地下部を掘る準備を進めるなどしている。

 新駅は、幅14メートルのホームを上下2本備え、現行の羽田空港駅の2倍に相当するスペースを確保。ホームまで荷物用カートを持ち込める。地下2階にあるホームと地上2階・3階にある到着・出発ロビーをエスカレーター・エレベーターで直結しており、重い荷物を持った乗客でも移動しやすくしている。

 当初の構想では、狭いホームでエスカレーターの乗り継ぎが必要になるような、単純な構造の駅を建設する予定だった。地下駅で充実した設備を実現するために、投資額は当初の2~3倍に膨らんだという。改札口が2カ所必要になるため、運営費用も通常の倍になる。

 京急のライバルである東京モノレールの新駅は地上にでき、ターミナルビルにアクセスしやすい。京急が費用をかけた理由は、営業面では、地下駅の不利を補うことにある。さらに、京急は競馬・競輪場や京浜工業地帯のイメージが強く、他の私鉄に比べてブランドを確立しきれていない。プロジェクトを主導する鉄道本部蒲田連立・空港線担当の新保貴光・課長補佐は、「費用対効果は金銭に換算しにくいが、便利な駅に投資することで、京急=羽田空港というブランドを確立できると考えた」と話す。新保課長補佐はこうした意義を説明して、投資の増額について社内で合意を得た。

 羽田空港プロジェクトは、通常の新駅建設に比べて制約が多い。「すべてにおいて、時間的余裕がない」(新保課長補佐)。ターミナルビルの開業時期が決まっており、遅れは許されない。駅ができる場所は空港内で、何をするにも国土交通省の許可が必要。それ以外にもビル運営会社や東京モノレールなど、調整が必要な関係者が多いという。

 新駅ができる場所では、今も毎日数百本の電車が走っている。安全運行に影響を与えないようにするため、工事自体のスピードは上げられない。「プロジェクトのスピードを上げるには、調整を素早くする以外の方法はない」(新保課長補佐)。京急では、新保課長補佐ら若手の実務リーダーに権限を委譲し、社内調整に時間がかからないようにした。他社との調整が必要な事項については、関係者が集まる月に1度の連絡会の場でなるべく決めてしまうようにしている。