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 「想定していたより、多くの顧客が殺到した。受け入れる準備が不足していた点は、大変反省している」。ソフトバンクモバイルの孫正義社長(写真)は10月30日、同月28日と29日に発生していた、携帯電話番号ポータビリティ(MNP)に関する申し込みなどの受付業務を停止したことについて、謝罪すると同時に、原因と今後の対策について発表した。主な原因は、顧客が他社サービスに乗り換える際、その解約処理に遅延が発生し、システム負荷が高まったこと。既にシステムの増強や構成変更をしたが、今後も「人員増強やシステム増強で解決できるものについては、すべて対処する」(孫社長)とした。

 システムの負荷が最初に高まった原因は、「複雑な“家族割”の解約処理だった」(阿多親市 情報システム・CS統括本部長(CISO)兼カスタマーサービス本部長)。顧客が携帯電話会社を変更する際は、変更先の会社が変更元の会社に顧客の転出処理を依頼する。転出元の会社は、解約・転出を確認し、その旨を返答しなければならない。返答時間は、ソフトバンクモバイルとNTTドコモ、KDDIの3社間で120秒と取り決めている。

 しかし、ソフトバンクモバイルでは、家族割の解約処理で、他社に対して120秒以内に転出する処理の終了を返答できなかった。120秒を超えた時点で、リトライが発生。さらにリトライの回数が事前に設定した値を超えて、エラーとなってしまった。これが影響して、新規受付など他の業務処理にも支障を来たした。

 対策は主に二つある。一つは、システムの処理能力の増強だ。「アプリケーションに割り当てるスレッド数やプロセス数を見直し、処理能力を2倍程度に増強した」(阿多CISO)。もう一つは、システム構成の変更である。「他社への変更処理に伴う解約処理を切り離し、120秒以内に返答できるようにした」(阿多CISO)。さらに暫定的な措置として、11月5日まではMNPに関する受付業務を最優先し、機種変更の手続き受付を停止する。

 一方で孫社長は、「MNPは最大のチャンスであり、最大のリスクだった。日本の携帯電話料金は高いと感じていた。新規申し込みが集中したのは、顧客も高いと感じていたからだ。MNPの本質である、顧客の流動性を高めることには貢献している」とし、同日、新料金プランも発表した。他社の電話にかけるときの料金設定に関するもので、「ゴールドプラン」において11月10日から30秒当たり20円と「他社並みの料金設定」(孫社長)とする。