関連する項目のつながりを図示する。百科事典だけでなく、デジタルコンテンツとして取り込んだ別の書籍の項目も同時に表示できる
関連する項目のつながりを図示する。百科事典だけでなく、デジタルコンテンツとして取り込んだ別の書籍の項目も同時に表示できる
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 日立システムアンドサービスは2006年10月30日、百科事典に収録された項目の関連付けを図示する検索システム「知のコンシェルジェ」を発表した。2006年11月から百科事典の検索サービスとしてインターネット上で公開する。東京大学でも2007年度から同システムを利用して一部講義の参考文献を参照できるようにするなど、専門知識の電子化を進める。

 例えば「富士山」で検索をすると、周囲に複数の関連項目が現れる。この中から「富士五湖」をクリックすると、さらに「山中湖」「川口湖」といった項目が現れる。各項目のつながりが図示されるため、関連性を理解しやすいほか「織田信長の弟の織田有楽斎を調べていると、有楽町の地名の由来であることを見つけるなど、気付く力を促す」(日立システムアンドサービス コンテンツビジネス本部 藤井泰文氏)という。一般企業においても、従業員が習得している資格や経験した業種などを体系化して図示するナレッジマネジメント分野に適用できる。

 百科事典では索引や参照語によって各項目を関連付ける。東京大学で利用する場合など、コンテンツを追加する場合は、研究者などが手作業で各項目を関連付ける。有識者が項目のつながりを吟味し、精度の高い情報を用意することで、インターネットの検索エンジンと比べて精度の高い情報を得られるという。「GoogleやYahoo!、ウィキペディアなどの利用が一般化しており、ネットですべての知識を検索できれば、大学はいらないのではなどといわれかねない状況だ。今回の仕組みは人間の復権。これまで培ってきた経験や勘を、デジタルの技術と融合する試みとなる」(東京大学 大学院情報学環・学際情報学府 学環長の吉見俊哉氏)。

 「知のコンシェルジェ」はWeb上のサービス「ネットで百科 for ブロードバンド」として2006年11月に公開。2007年3月までは無料サービスとする予定。教育機関や出版社、一般企業へのサービス提供も進める。