写真1●フィッシング・サイトの疑いがあるサイトを表示しようとすると警告が現れる
写真1●フィッシング・サイトの疑いがあるサイトを表示しようとすると警告が現れる
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 10月26日に開催されたカンファレンス「REMIX Tokyo」で,マイクロソフト ディベロップメント Windows開発統括部の五寶匡郎氏は,IE 7.0の機能概要を説明した。1時間という短い時間内で五寶氏が優先的に語ったのは,IE 7.0利用時の注意点だった。

 タブ・ブラウジング,縮小全体印刷,ページ・ズーム,お気に入りセンター---。これらはInternet Explorer(IE)の新バージョン7.0に搭載される新機能の一部だ。こうした新機能によりIEは,現行バージョンに比べて利便性や使い勝手が大きく改善される。しかし,五寶氏はこうした新機能の紹介は触れる程度にとどめた。IE 7.0登場に合わせて,互換性の面で注意してほしいこと,現在のWebサイトに手を加えてほしいことがたくさんあるからだ。

 数々の変更点の中で最も注意が必要なのは,セキュリティ強化に関するものだ。例えば,IE 7.0ではフィッシング詐欺検出機能が搭載される。これはサイトを表示する際に,バックグラウンドでデータベースに照合して,フィッシング・サイトと思われる場合は警告を表示するというものだ(写真1)。ありがたい機能である半面,問題のないサイトであっても誤った判定を受けてしまう可能性があるという。それを避けるために,Webオーナーや管理者は自社のサイトについていくつかの項目をチェックし,フィッシング・サイトではないことを報告するよう推奨されている。

 セキュリティ関連では,「保護モード」という新機能にも精通しておく必要がある。保護モードには「整合性レベル」という仕組みがある。これは高・中・低の三つのレベルに分けて,プログラムが操作できるシステム領域を限定するというものだ。Windows VistaでIE 7.0を利用する場合は,IEは標準では一番低い整合性レベルで動作する。これにより悪意のあるプログラムが勝手にインストールされてしまうといったことを防ぐ。

 一方で,社内向けの安全なActiveXコントロールなどがうまく動作しなくなる可能性がある。その場合,開発者は適切なAPIを使って,IEの権限を一時的に昇格するようにプログラムを修正しなければならない。

 セキュリティ関連以外でもいろいろな注意点がある。例えば,IEユーザーにとっては待望のタブ・ブラウズ機能も良いことばかりではない。タブ機能を使っている場合,ウィンドウ・オブジェクトのほとんどはスクリプトで制御できないという制限がある。現在,ウィンドウを表示する際に,ツールバーを非表示にしたり,ウィンドウ・サイズを変えたりしているスクリプトはタブ・ウィンドウでは機能しないので書き直す必要がある。

 指定サイズのウィンドウを表示させたい場合は,モードレス/モーダル・ダイアログを使うことになる。ただし,ダイアログの機能にも一部変更がある。例えば,dialogHeightプロパティの値は,これまでウィンドウ全体の高さを示すものだったが,新版ではコンテンツ・エリア内の高さに変更された。

 タブ機能のサポートにより修正を余儀なくされる開発者からは,せめてユーザーがタブ機能を使っているかどうかを知るAPIが欲しいとの声が上がっている。だが,残念ながらIE 7.0にはそうしたAPIはない(五寶氏によると,米Microsoftに対して仕様変更のリクエストを出していると言う)。