写真:米Microsoftで次世代Web戦略を担当するCharles Fitzgeraldゼネラル・マネージャ
写真:米Microsoftで次世代Web戦略を担当するCharles Fitzgeraldゼネラル・マネージャ
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 米Microsoftで次世代Web戦略を担当するゼネラル・マネージャであるCharles Fitzgerald氏は10月26日,Webアプリケーション開発カンファレンス「REMIX Tokyo」で基調講演を行った。Fitzgerald氏は「ソフトウエアとサービス,Webブラウザとスマート・クライアント,所有と共有といった概念は,二者択一で考えるべきものではない。Microsoftは“AND”でやる(両方やる)」と強調した。

 Microsoftは現在,「Software Plus Services」という方針を立てて製品を開発している。インターネット上でサービスとして提供するソフトウエアも強化しているが,デスクトップ・アプリケーションやサーバー・アプリケーションとして販売しているソフトウエアをサービス形態に移行するのではなく,サービス・モデルとソフトウエア・モデルの両方を手がけている。

 「われわれが提供したいのは,シームレスなユーザー・エクスペリエンスであり,様々なデバイスやアプリケーション,サービスが融合する世界だ。そのためには,Software Plus Servicesというアプローチが必要なのだ」(Fitzgerald氏)。例えば,サービス・モデル事業の代表格である「Windows Live」にも,「Windows Live OneCare」というデスクトップ・アプリケーションが含まれている。

 Webブラウザを使うアプリケーションと,デスクトップ・アプリケーション(スマート・クライアント)も,二者択一の対立する概念ではないとFitzgerald氏は訴える。Windows Vistaと同時に提供される「.NET Framework 3.0」の一部であるリッチ・クライアント環境の「Windows Presentation Foundation」を使って開発したアプリケーションは,WebブラウザにホストするとWebアプリケーションになり,デスクトップにホストするとデスクトップ・アプリケーションになる。どちらの形態でも利用できるようになっている。

 Fitzgerald氏はほかにも,「パソコンとその他のデバイス」「WebとPeer to Peer(P2P)」「所有と共有」も二者択一ではなく,Microsoftは両方のモデルを「AND」で提供すると訴える。パソコン以外のデバイスにもWindowsを提供するし,サーバー・アプリケーションだけでなくP2Pアプリケーションも提供する。ソフトウエアのライセンス販売だけではなく(所有),ホスティングでのサービス提供(共有)も行う。すべて「AND」で行くというのが,Microsoftのスタンスだ。

RSSは「顔のないユーザー・エクスペリエンス」

 Fitzgerald氏は,Microsoftがソフトウエアやサービスを提供する上で,唯一の重視しているのが「ユーザー・エクスペリエンス」(ユーザーにとっての使い勝手)だと主張する。ユーザー・エクスペリエンスは,ユーザー・インターフェースの使い勝手だけを指す概念ではない。例えば「RSSは,顔のないユーザー・エクスペリエンスだ」(Fitzgerald氏)と訴える。ユーザーがRSSを使って情報を組み合わせたりできるようにすることも,使い勝手を上げるための大切な要素だという主張だ。

 「Webブラウザのエクスペリエンス(使い勝手)を向上させる(WPF以外の)もう1つの要素が,Ajaxだ」(Fitzgerald氏)。Fitzgerald氏は「Ajaxは,7~8年前から存在する技術で成り立っている。DHTMLは,Internet Explorer 4.0でサポートされていたが,注目を集めなかった。MicrosoftもAjaxのような良い名前を付けていれば,もっと早くAjaxのような技術を普及させられていたかもしれない」と冗談めかして話した。

 「しかし,Ajaxは開発が難しい。そこで,Ajaxアプリケーションの構築を容易にするライブラリ『Atlas』(開発コード名)を提供する。既に『MySpace』のような大規模ユーザーが,MicrosoftプラットフォームでAjaxを実現している。Webブラウザだけで実現不可能なユーザー・エクスペリエンスは,スマート・クライアントで実現すればよい」(Fitzgerald氏)。Fitzgerald氏は,スマート・クライアントの実例として,NHKが開発中の動画配信用アプリケーションを紹介した(関連記事:NHKの動画配信は「脱Webブラウザ」で「Web 2.0」を目指す)。

Vistaの注目機能はガジェット,WPF,Media Center

 11月に完成する予定の次期クライアントOS「Windows Vista」に関してFitzgerald氏は,「ユーザー・エクスペリエンスという観点で見るなら,ガジェットとWPF,Media Center機能の3つが,Windows Vistaの注目点だ」と主張した。

 ガジェットは,デスクトップ画面で利用するミニ・アプリケーションだ。WPFは前述の通り,リッチ・クライアントを実現するアプリケーション環境である。Media Center機能は,Windows XPでは「Media Center Edition」にだけ搭載される機能だったが,Windows Vistaでは「Home Premium」と「Ultimate」というエディションに内蔵される。

 「Media Centerも,RSSに対応している。RSSで動画を購読(サブスクライブ)することも可能だし,動画を再生したまま,他の動画を探したりできるようになる。ユーザー・エクスペリエンスが大きく向上する」(Fitzgerald氏)とアピールしている。