総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 高度通信網振興課の片桐広逸・高度通信網推進官
総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 高度通信網振興課の片桐広逸・高度通信網推進官
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総務省は,8月に「次世代ブロードバンド戦略2010」を策定。u-Japan政策で掲げた「2010年にブロードバンドの世帯カバー率100%」という目標を実行に移し始めた。山間部や離島へのブロードバンド整備方法を検討する委員会を総務省の主導で設置。そこで作成された都道府県別のロードマップをベースに,自治体主導のデジタルデバイド解消を目指す。この取り組みを指揮する総務省高度通信網振興課の片桐広逸・高度通信網推進官に話を聞いた。(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション)

--以前から「2010年までに世帯カバー率100%」という目標はあった。従来の取り組みとは何が違うのか。

 2010年までにブロードバンドの世帯カバー率を100%にするというのは,u-Japan構想にも盛り込まれていた既定路線。ただし総務省はこれまで,ブロードバンドの敷設は民間主導で進めるというスタンスを取ってきた。その結果,ブロードバンドの世帯カバー率は94%まで達した。しかし残り6%の世帯は,民間主導ではブロードバンドが敷設されない可能性がある。そこで市町村などの地方自治体が主導して,地域間格差を解決する取り組みを始めたい。

--具体的にはどのように取り組んでいるのか。

 全国地域情報化推進協会に「情報通信インフラ委員会」を立ち上げ,全国レベルの方向性や取り組みを検討している。委員長は齊藤忠夫・東京大学名誉教授が務め,自治体と通信事業者,メーカーなどが参加している。

 実際にインフラを運営してサービスを提供するのは,通信事業者の役割。事業のリスクは通信事業者が負うことになる。そのため,市町村が通信事業者とどう交渉をするかが重要だ。例えば,通信事業者に需要保証を提示することで事業者のリスクを低くくしたり,自治体が保有する光ファイバを貸し出してインフラ敷設コストの負担を軽減するなどの工夫が必要な場合もある。

 また,ブロードバンドの実現技術やブロードバンド上で利用するアプリケーションについても重要だ。一度サービスが始まると,後から線を引きはがすことはできない。インフラの構築・維持費を安くすることや,地域住民や地域産業にブロードバンドを利用し続けてもらうための方策が必要になる。そのための知恵は世の中に既にあるが,断片的で体系化されていない。情報通信インフラ委員会では,こうした知恵の体系化も進める。まずは,先進自治体の利活用事例などを集めている。

 情報通信インフラ委員会では,通信事業者との交渉方法や実現技術,アプリケーションなどを自治体向けに平易にまとめ,ブロードバンド整備マニュアルを作成する。並行して,都道府県単位の整備計画(ロードマップ)を策定して目標を設定する。

 全国レベルの取り組みに加え,地方レベルの取り組みについて各地域の総合通信局や市町村,通信事業者で連携して検討する。ここでは,都道府県単位の計画から,市町村単位の計画にブレイクダウンした議論を進める。

--自治体や民間事業者向けの利子助成や補助金などを新設することもあるのか。

 基本的には従来からある制度を活用する。具体的には,電気通信基盤充実臨時措置法による支援や地域情報通信基盤整備推進交付金などがある。これらは設備費用への補助となる。運営費を補助して欲しいという声は多いのだが,財政の論理上難しい。今までも,設備には出せるが運営費を補助できたことはない。