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 「システムの全面再構築は楽しい仕事。失敗するのではないか、できないのではないかと悩まずに、勇気を持って一歩を踏み出すのが大事だ」。トヨタ自動車の天野吉和常務役員は10月25日、日経コンピュータが開催した創刊25周年記念セミナーでこう述べた。

 講演は、トヨタ自動車の天野常務とJFEスチールの菊川裕幸システム主監による対談形式で進んだ。両者の共通点は、システムの全面再構築プロジェクトの責任者を務め、成功させたことだ。

 トヨタ自動車は、300億円を投じ3年がかりで部品表データベースと基幹系システムの再構築を成功させている。プロジェクトの陣頭指揮を執った天野常務は、「全面再構築は大変だったのではないかとよく聞かれるが、そうは思わない。やればできると思う」と話した。

 今年3月に基幹系システムの全面刷新を果たしたJFEスチールの菊川主監は、「プロジェクトを通じてベテランから若手に技術を継承できた。人も育った。経営層に情報システムの重要性を再認識してもらうこともできた」と再構築の成果を説明した。

 基幹系システムの全面再構築はメリットがある一方、費用を確保できずに断念するユーザー企業は少なくない。こうした現状に、トヨタ自動車の天野常務は「既存システムの保守・維持にかかる費用を新規開発に回せば、追加の費用負担を最小限に抑えられる」との持論を展開。「トヨタではかつて年間IT投資の7割が保守・維持費用だったが、『既存システムの機能強化を2年間我慢してくれれば、新システムを作ってみせる』とユーザー部門に頭を下げて、新規開発の費用を捻出した」と続けた。

 リスクと予算の面でメドがついても、経営層が必ず承認してくれるとは限らない。これについて、JFEスチールの菊川主監は「経営層は起案した責任者の熱意を見ている」と分析。「会社の将来を考えると再構築が必要不可欠だということを責任者が熱く訴えれば分かってもらえる」とした。