ビジネス・ブレイクスルー代表取締役社長 
大前 研一氏

 「企業は『答えのない世界』で、前例のない答えを恐れずに考える人を何人抱えているかが重要なポイントになる」。ビジネス・ブレイクスルー(本社東京)代表取締役社長の大前研一氏は10月25日、日経コンピュータ創刊25周年記念セミナーの基調講演で、こう語った。「ITは人の動きを縛る。システムが完成すると社員が考えなくなる。ある時はITで加速し、ある時は壊すというリズムが必要。そのためにも、従来の発想にとらわれない、感性が違う人材が鍵となる」(大前氏)。

 昨今のビジネスの速度変化についても解説。「ちょうど1年前の今ころ、時代の寵児とマスコミがもてはやされていた人たちの現在を見てほしい。この1年だけでもどれだけ時代が動くのか。政治や株価に舞い上がっている間に、世の中は変わっていく。GYAOが注目を浴びている間にも、YouTubeを使う日本人(特に高校生)が増えた。先週多かったアクセス先はマニラだったが、その前は世田谷区と北区だった」(大前氏)と、浮沈の激しさが増す、ITに関連したビジネスの流れを説明した。

 加えて、そうした動きの速さに対抗するためにも、「活力がある会社の経営メンバーは、年代だけではなく、性別や国籍などが違うことが多い。グーグルにはロシア人、YouTubeには中国人、ミクシィの創業者にも日本人以外の人が入っている。そうした異種混合で、改善型経営が必要になる」と大前氏は提言する。

 そうした経営に必要なのが「答えが用意されていない世界で、人の意見を聞いて、それらを合成できる力。そうしたリーダーシップを持てる若い人を育てなければならない。北欧の教育改革はすでにそうした方向に舵を切っている」と、大前氏は教育問題にも言及。その危機感は、「第2次産業、第3次産業で、後発国に追いつかれる。そのとき日本は何で生きていくのか。ゲームやアニメでは、前例がなくて評価される業界がすでに日本にはある。そうした21世紀に通用する人材にあふれ、期待を持てるフレキシブルなIT力がある企業ランキングを日経コンピュータ誌で見たい」と大前氏は講演を締めくくった。