スーパー・コンピュータ「PACS-CS」
スーパー・コンピュータ「PACS-CS」
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 富士通研究所は筑波大学計算科学研究センターと共同で,サーバー間インターコネクトに汎用のイーサネットを利用しつつ高速に通信できる軽量プロトコル・ソフトウエアを開発した。ギガビット・イーサネット6本を束ねた際に,1秒あたり1.4Gバイトの転送性能を持つ。同プロトコルは筑波大学が開発したLinuxベースで2560ノードからなる超並列クラスタ型スーパー・コンピュータ「PACS-CS」に搭載,スーパー・コンピュータのベンチマーク試験であるLinpackで10.35T FLOPSを計測した。

 従来,TCP/IPとギガビット・イーサネットの組み合わせでは,ギガビット・イーサネット2本を束ねて毎秒250Mバイト程度の転送速度を出すのが限界だった。これに対して,PACS-CSは軽量な専用プロトコルによって,ギガビット・イーサネット6本を束ねて毎秒1.4Gバイトの性能を出せる。この実効数値は,サーバー間インターコネクト専用ネットワークである「InfiniBand 4X SDR」(2.5Gビット/秒×4レーン)を超える。ソフトウエアだけで実現しているため,特別なNIC(ネットワーク・インタフェース・カード)は必要ない。

 同プロトコルは,CPUが物理メモリーにアクセスしてデータをコピーするといった処理を実施せず,メモリー上のデータを通信先のメモリーに直接転送するソフトウエア技術を用いた。さらにLinuxカーネルの処理を解析して処理量の少ないプロトコルに仕上げた。また,TCP/IPプロトコルの代替としてそのまま,10Gビット・イーサネット(10GbE)などイーサネット・プロトコルを用いたネットワーク上で利用できる。富士通研究所によれば,実際に10GbEに適用した結果,2枚の10GbEを束ねて毎秒2Gバイト以上の通信速度を確認したという。

 富士通研究所は,InfiniBandやSANなどの専用ネットワークを汎用のイーサネットに置き換えるための活動に取り組んできた。10GbE用LSIチップの開発や,今回の軽量プロトコル・ソフトウエアの開発などである。