米マイクロソフトのダニエル T.リン コーポレートバイスプレジデント
米マイクロソフトのダニエル T.リン コーポレートバイスプレジデント
[画像のクリックで拡大表示]

 米マイクロソフトの研究機関である「マイクロソフト リサーチ」。その中核にあたる米国のレッドモンド研究所を統括する、ダニエル T. リン コーポレートバイスプレジデント(写真)は、マイクロソフト リサーチの活動について、「リスクを恐れずに長期プロジェクトに挑む」と、革新性を保つための取り組みを続けていく姿勢を示す。

 「製品化にとらわれるより、むしろ“成功するかどうか分からないテーマ”に積極的に取り組んでいく」。リン氏は、基礎研究部門としてのマイクロソフト リサーチの使命をこう説明する。製品化を気にしすぎると、新しい発想の芽がつまれてしまうからだ。

 マイクロソフト リサーチは1991年に、マイクロソフト本社のあるレッドモンドに発足した。現在、ほかに米国のマウンテンビュー、英国、インド、中国に研究所があり、700人を超す研究者が在籍する。研究テーマは、「分散システム」や「開発言語」など、約55の領域に分かれているという。

 それぞれの研究プロジェクトは、短期的なものから中長期的なものまでさまざま。長期プロジェクトの途中でも、研究者と製品事業部門マネジャが話し合った結果、その時点での成果が製品に反映されることもある。臨機応変に開発・事業化を進めるのが、マイクロソフト リサーチの方針という。

 ここ数年、マイクロソフトは「製品・サービスの革新性」という点で、米グーグルと比較されることが少なくない。リン氏は、グーグルを強力なライバルと認めながらも、「マイクロソフトのほうが研究開発のカバー範囲が広い。革新性でもひけを取らない」と強調する。マイクロソフトが衛星写真と地図表示を組み合わせて提供するサービス「Virtual Earth」は、その一例だ。サービスの公開は、グーグルの「Google Earth」のほうが一足早かったが、「アイデアや技術に目を付けて、開発に着手したのは我々のほうが先」とリン氏は話す。

 マイクロソフト リサーチの研究者が、常に新たな発想を抱き、モチベーション高く研究にまい進できるようにする秘訣は、何だろうか。リン氏は、「研究成果を自由に発表できるようにすること」がその一つだと明かす。「研究者は誰しも、自分の成果を認めてもらいたいものだ。このため、研究結果が事業化・製品化されたかどうかを問わず、その発表を制限しないことを当社の運営方針としている」(リン氏)。この点で「マイクロソフトはグーグルよりオープンで、研究者も働きやすい」というのがリン氏の考えだ。