「現在のFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)市場の拡大は,NTTグループの独り勝ちを反映しているだけにすぎない。このままではデジタルデバイドは拡大し,市場競争も縮小してしまう」――。イー・アクセスの千本倖生会長は,同社の子会社で移動通信事業に参入予定のイー・モバイルの事業説明会で,固定通信事業の競争状況に対する懸念を表明した。「NTTグループが異常とも言える販売促進費を投じて,ADSL(非対称デジタル加入者線)サービスの加入者をFTTHサービスに移行させている。これではADSLサービスで実現していた事業者間競争が働かなくなり,市場が拡大しない。その結果,NTTグループも採算性が悪化していくだろう」と警告する。

 NTT東西地域会社のFTTHサービス契約者は2006年6月末時点で400万件を超し,シェア(市場占有率)では64.6%を占める。総務省の調査ではNTT東西のシェアは四半期ごとに数%ずつ上昇する傾向にあるという。こうした寡占傾向が強まることにより,「FTTHサービスは普及するのではなく,ユーザーを効率的に獲得できるエリアにしか提供されなくなる」(千本会長)という。全家庭に引き込まれた電話線を使えるADSLサービスでは,競合事業者が多数登場したことによって提供エリアの拡大が進んだ。だが,競争相手がいないFTTH市場では,NTT東西は,ユーザーが集中する都市部に集中して契約を獲得するだけで,グループの目標である3000万契約を達成することも可能だからだ。